436: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/05/26(土) 21:06:31.84 ID:i92fwNbE0
私にとって不幸中の幸いは、自分が戦車の車長で、かつ一人ではないことだった。もしも孤立した上でこの状態に陥っていたなら、きっと順当に二階級特進となっていたに違いない。
「────尉、蝶野一尉!眼ぇさませ、しっかりしろ!!!」
「っ!?」
437: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/05/26(土) 21:12:32.42 ID:i92fwNbE0
交戦早々に反撃の間を与えない猛攻を展開しての、一方的なハ級撃破。流れとしては一度目の交戦と遜色ない、理想的な滑り出し。
ただし今回の場合、敵艦隊の数が最初と比べて大幅に増えているという難点が存在した。
『『『ァアアアアアアァッ!!!!』』』
438: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/05/26(土) 21:56:23.60 ID:i92fwNbE0
《第二軽機関銃班通信途絶!》
「1号車より各位、展開地点への砲弾直撃を視認!生存者は確認できず!
怯むな、攻撃の手を止めず撃ちまくれ!!」
439: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/05/26(土) 22:59:21.04 ID:i92fwNbE0
尤も、今の戦法を維持してもどのみち状況は好転のさせようがない。敵の数は30を越え、深海棲艦一隻の沈黙に此方の砲弾は急所への集中攻撃でも10発前後を要する。それに対して戦車はたったの二両、残弾も各20発強しかない。
『ァアアア……グァ………』
《ハ級一番、沈もk発砲炎を視認!!》
440: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/05/26(土) 23:28:47.22 ID:i92fwNbE0
M42からの通信は、ヤケクソ気味の悪態で締めくくられる。
一応は納得してくれた彼には申し訳ない話だけど、私が口にした内容は全てが真実ではない。
勿論大洗町、というよりは茨城県沿岸の完全失陥や民間人への被害発生を回避するために、私達が踏み止まらなければならないというのは事実だ。【ダスター】の進言を受けてCPに退却許可を打診したとしても、これが理由で棄却される確率は非常に高い。だけど、そういう状況であることを利用して、私が本当にここに踏み止まりたい理由には触れずにいた。
441: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/05/26(土) 23:59:10.65 ID:i92fwNbE0
「……此方大洗シーサイドスクエア。ヒトマル1号車車長・蝶野より近隣各拠点に伝達、稼働可能な装甲戦力を報告せよ。それから艦娘部隊の中で損傷軽微・戦闘可能な艦が居ればそれも共有されたし!」
《重巡洋艦羽黒、沿岸部から離脱後若宮交差点へ転進、自衛隊の皆さんと合流しました。敵砲火を受け続けていますが損傷軽微、戦えます!》
《西福寺前、駆逐艦・陽炎健在!合流は可能よ!》
442:名無しNIPPER[sage]
2018/05/27(日) 23:25:32.82 ID:yEantkf+0
乙!
443:名無しNIPPER[sage]
2018/05/31(木) 19:42:16.74 ID:aFzsXU9RO
乙
444: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/06/04(月) 23:44:47.28 ID:8RT1ILCz0
「シーサイドステーションよりCP、通信が取れた拠点から残余艦娘戦力並びに機甲戦力の抽出・再編許可を願う!
現在市街地に展開する最大火力の集中運用にて正面敵艦隊の上陸を阻止した後、大洗海岸通り方面に突貫し敵浸透部隊を撃滅する!」
《CPよりシーサイドステーション、許可する。近隣拠点にて機甲部隊・艦娘が健在かつ派遣可能な箇所は速やかに大洗シーサイドステーションまで急行させろ!!》
445: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2018/06/04(月) 23:47:41.00 ID:8RT1ILCz0
それでも、光明もある。駆逐艦ながら高い性能を誇る陽炎が貴重な対空火力であるM42も伴っての派遣される点はプラスの意味での計算外だ。逆に主戦力と見込んでいた重巡羽黒はまだ動けないらしいけれど、そもそも彼女がいる若見屋交差点はここから1キロと離れていない。
敵航空隊の排除さえなれば、徒歩でも10分とかからず合流が見込める。苦戦するようなら、先に陽炎たちを若見屋交差点の援護に向かわせて敵航空隊を跳ね返すという手もある。
例え極楽の菩薩が気まぐれで垂らした蜘蛛の糸よりか細いものであったとしても、反撃への道筋が残っている限り私達に“諦める”という選択肢は無しだ。
446: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2018/06/04(月) 23:50:03.92 ID:8RT1ILCz0
《敵航空隊、更に一部が対空砲火を抜ける!直上より急降下!!》
M42からの警告の叫び声。比喩表現ではない、本物の地獄へ誘おうとラッパの音が空から迫る。
腹の底で尚も渦巻く恐怖を飲み下し、機銃の火線をラッパの音が聞こえてくる方に向ける。火線を突き入れられて編隊飛行を乱した10機ほどの黒い機影が、忌々しげに踵を返す様子が視界に映った。
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