エンド・オブ・オオアライのようです
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436: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/05/26(土) 21:06:31.84 ID:i92fwNbE0
私にとって不幸中の幸いは、自分が戦車の車長で、かつ一人ではないことだった。もしも孤立した上でこの状態に陥っていたなら、きっと順当に二階級特進となっていたに違いない。

「────尉、蝶野一尉!眼ぇさませ、しっかりしろ!!!」

「っ!?」

叫び声と共にガツンと音がして、膝のあたりに鈍い痛みが走る。同時に、時間にして数秒の(しかし生死の境を分けかねなかった)硬直が解け、私の耳と脳と身体は急速に機能を回復した。

「中内のことしかり飛ばす権利ねえッスよそれじゃあ!!あたしゃまだ母校が優勝旗勝ち取るまでは死なねえって決めてんだ、しゃんとしてくれ!!」

『ギィアアッ!!?』

足下から上がる叱咤激励の声に続いて、今度は乗っているヒトマルの主砲が吠える。砲弾が獰猛な風切り音を伴ってハ級の下顎部分に直撃し、強大な運動エネルギーを持ってその皮膚を粉砕する。甲殻の残骸が地面で跳ね、カラカラと乾いた音を立てる。

「ハ級二番の損害を確認も、敵の後続艦隊は尚も上陸中!

一尉、このままじゃヤバいっす!指示をください!!」

「……まずは確実に敵を一隻減らすべきよ、ハ級二番への攻撃を続行!」

「Si, Signore!!」

『ァアアァアアアッ!!?』

あえてイタリア語で返された返事と共に放たれた今度の砲撃は、ハ級の眼球のど真ん中を撃ち抜いた。甲高い破砕音を残して表皮と眼球の残骸と思われる透明感のある破片が飛び散り、傷口から青い体液を迸らせながらハ級が凄まじい音量の悲鳴と共に悶絶する。

大隈瞳(おおくま・ひとみ)二等陸曹。アンツィオの卒業生である彼女は、かの学園艦のノリと勢いを重視した底抜けに明るい校風を色濃く受け継いでいる。砲手としての腕前は見ての通り確かだけど、今回はそれ以上に彼女の明るさに救われた。

「2号車、続けてハ級二番に照準合わせ!随伴歩兵隊、後続の敵艦隊に火力を均等展開、撃破ではなく足止め・上陸妨害に重きを置いて!」

《り、了解!………撃て!!》

『ア゛ッ………』

2号車の125mm弾が飛翔、未だ黒煙を吹き青色の血を流し続ける傷口に突き刺さり、肉をえぐり、体内奥深くで炸裂する。

小さな呻き声を一つ残して、ハ級の体躯が横倒しになった。

そのまま数秒に渡ってハ級は痙攣を繰り返した後、穴だらけの身体からぐたりと力が抜け永久に活動を停止する。


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