エンド・オブ・オオアライのようです
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435: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2018/05/26(土) 21:00:29.81 ID:i92fwNbE0
非ヒト型の深海棲艦、分けても駆逐級の通常種は基本的にヒト型種と比べて遙かに与し易い。……まぁ私は交戦の実体験が皆無なのでなんとも言えないけれど、少なくとも世界中の軍事関係者が口を揃えて断言し、実際に過去の交戦結果にもそれはとして顕著に表れている。

見たところ、私達の前方に上陸を開始している深海棲艦の強襲部隊にリ級やル級の姿は確認できない。最初の襲撃と同じで、先鋒のハ級を含めて全て駆逐か軽巡で構成されている可能性が高い。

そしてシーサイドステーションは甚大な損害を受けたとはいえ、未だ迫撃砲や84mm無反動砲を10門以上保有している。何より、厚さ1メートルの近代特殊装甲をぶち抜けるAPFSDSを30発強も抱えた10式戦車が二台ある。

戦力的な面から見れば、大洗女子学園からの砲撃や空襲を考慮に入れても私達には粘る余地が十二分にあるはずだ。実際、さっきは二隻の敵を早々に沈めて一度跳ね返しているのだから。

────あくまでも、理論上では。

『ォオ、ギィイイイ……』

125mm弾二発の直撃を食らったもう一体のハ級が、唸りながらゆっくりと此方に向き直る。着弾点には直径20cmはあろうかという穴が穿たれ、表皮装甲は捲れ上がり、黒煙を吹く傷口からは青い体液がボタボタと垂れ流され地面に染みを作っている。一瞬5メートル強の巨軀が揺らいだように見えたのは、受けたダメージが大きくてバランスを取れなくなっているのかも知れない。

歯の隙間から漏れてくる咆哮もまた、出現直後のものに比べて遙かに弱々しい。私達への威嚇だと思っていたが、あの様子を見る限りあるいは単なる苦悶の声だとしてもおかしくはない。それほどか細く、くぐもった声だった。

『ガァ……アァアア……ッ!!』

「────……」

なのに、奴の眼に宿る光の強さは────私達人間に対する、強烈な殺意が込められた眼光は、これっぽっちも弱まらない。

『ギガァアアアアッ……』

無機質で、体温が感じられない、ガラス玉のように人工的な光沢を放つ青い単眼。何を考えているのか、そもそも考えるという行為自体しているのかさえ疑わしい目付き。

だけどその奥に揺らぐ意思だけは、明確に読み取れる。ハ級が───深海棲艦が私達に向ける殺意、害意、悪意……様々な負の感情を、まるで直接脳裏に刻み込まれているような感覚と共に私は理解してしまう。

その強烈な負の感情を込めた眼光に……否、“負の感情そのもの”に射貫かれて、私は打ちのめされる。心臓を冷たい掌で包まれたような感覚が走り、機銃を握る手は強張り、身体は震えて動かない。

それはまるで、腹を空かした獅子に睨まれる野兎のような有様だった。


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