藤原肇「ナイトフィッシングイズグッド」
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13:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:46:50.17 ID:2O49l66V0
 彼女は一度、寮を真剣な目で見つめていた。

 一つ深呼吸をしたあと玄関までの階段を登ろうとしたようだが、どうやらキャリーバッグが持ち上がっていなかった。

 彼女が困り顔で辺りを見回しているのを、俺は走るフリをするのも忘れて、ボケっと見ていた。


14:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:48:01.54 ID:2O49l66V0
 一目見ただけで、また夢を見た。

 それは白昼夢と言っていいものかもしれなかったけれど、肇の黒い髪がライブのステージで揺れ、白いサイリウムの光に手を伸ばして歌う光景をはっきり見た。

 素朴な雰囲気のあの子が、俺が作り出した舞台で、仕事で、欲を言えば楽曲で、白い花を大きく咲かせたように素敵に着飾る姿を、確かに見たのだ! 
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:49:12.39 ID:2O49l66V0
 今思えば肇には随分怖い思いをさせたと思う。

 なぜあの時「君のプロデューサーです」と切り出せなかったのか。

 いや、それを言っても怖がらせてしまったかもしれない。ただ、もう少しやり方はなかっただろうか。
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:50:30.89 ID:2O49l66V0
 さて、着替えも終わり、軽自動車に乗り込む。

 学生時代からの相棒に久しぶりに火を入れると、なんとか元気な様子で安心した。

 ギアを入れアクセルを踏むと、ボロロロという音がした。
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:51:35.65 ID:2O49l66V0



 寮の前に車を停めると、既に肇は表に立っていた。

以下略 AAS



18:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:53:26.64 ID:2O49l66V0
 門前には五十嵐さんも立っており、俺たちを見送りに来たようだった。

 いくらか手伝ってもらいながら、彼女にそっと耳打ちをされる。

「深夜、ふたりきり。いいですかっ、変なことはなしですよ」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:54:34.74 ID:2O49l66V0
 積み込みが終わり、俺が運転席に乗り込む。

「後ろに乗りなよ」

 と肇に言ったが、肇は澄まし顔で助手席に乗り込んだ。
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:55:31.67 ID:2O49l66V0
 ガソリンスタンドは割とすぐそこにあり、セルフのスタンドだったことに安心する。

「目的地はどこ?」

「神奈川の、東扇島西公園……というところです。海釣りの場所は詳しくないのですが、調べたところそこで釣りができるらしくて」
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:57:04.42 ID:2O49l66V0
 コンビニに寄りコーヒー、エナジードリンクと、サンドイッチなどを買い込む。

 煙草を一本吸ってから車内に戻ると、肇が顔を顰める。

「臭いですよ」
以下略 AAS



22:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 02:59:19.07 ID:2O49l66V0
 釣り場に着くまで一時間くらい、俺はスマートフォンをスピーカーに繋いで、ごく小さな音でフィッシュマンズなどを聴いた。

 肇の静かな寝息を邪魔することのないように、ごく静かな音量で。

 肇のレコーディングにほとんど携われなかったのが少しだけ心残りだった。
以下略 AAS



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