8: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 20:53:36.49 ID:7+Q2lD4p0
“ありがとうございます、ごめんなさい” という虫の羽音のような言葉は、それでも尚、Pさんの耳朶に届いたようでした。
“すまない、文香。せっかくの誕生日がこんなことになってしまって”
Pさんが庇ってくれなければ、おそらくはもっと酷いことになっていたのに。
9: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 20:55:45.45 ID:7+Q2lD4p0
しばらく何も言えないでいると“文香、じっと顔を見られていると、恥ずかしい”と言われてしまいました。
ひょっとしたら頭がぼーっとしていた所為で、不躾な視線を送っていたのかもしれません。
私は慌てて横向き寝の状態から、Pさんと同じように仰向きになりました。
そのときです。
10: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 20:58:01.71 ID:7+Q2lD4p0
テーブルの方で響いたガラスの音が終わりの合図でした。
何事かとPさんと二人して首を上げて様子を伺います。
どうやら美波さんがテーブルの上でグラスを倒してしまったらしく、皆さんが酒宴そっちのけで処置のために慌てていました。
とはいえ、その慌ただしさはすぐに収まりました。グラスも割れませんでしたし、皆さん手慣れていましたから。
11: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 20:59:47.15 ID:7+Q2lD4p0
寝入ったときの姿勢そのままに目を覚ましました。
寝入る前のどんちゃん騒ぎが嘘だったように静まり返り、天井の照明器具が仄かな橙を灯すばかりで、目先の毛布の色さえ判然としません。
12: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 21:01:13.33 ID:7+Q2lD4p0
“嫌いなわけない。そういうことではない”
“じゃあ、好きですか? 美波はPさんのこと好きです”
“美波、待つんだ”
“しー。皆が起きてしまいますよ?”
13: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 21:03:43.79 ID:7+Q2lD4p0
マットレス内部のスプリングが軋む音が頭蓋の中で反響していました。
響く毎に、まるで脳幹にナイフを突き立てられている気分です。
そのナイフが胸まで達して、乳房を内側から切開され胸骨をむしり取られ、露わになった心臓が微塵切りにされてゆくよう。
心臓がただの肉片に変わると、次は肺でした。
握りつぶされ、くちゃくちゃにされて、もう二度と呼吸ができないのだと錯覚するほどに息苦しかったです。
14: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 21:04:32.56 ID:7+Q2lD4p0
上体を起こし辺りを見渡すと、慌ただしく出勤や帰宅の準備をしている皆さん。
ベッドに残っていたのは私だけ。
Pさんと美波さんは、毛布の中のことが嘘だったかのようにいつも通り。他の先輩方ともいつも通り。
ふと、本当に夢だったのかもしれないという考えが浮かびました。
15:名無しNIPPER[sage]
2017/10/06(金) 21:04:41.54 ID:Ls7wTlH4o
流石歩くセックス
16: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 21:04:50.62 ID:7+Q2lD4p0
食事も全くとらぬまま十時間近くも書き続けていたようです。
一度にこれだけの文字を書くと、流石に指が痛くなりますね。
それに頭の疲れももう限界のようです。
今日はここまでにしておきましょう。
17: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 21:05:18.68 ID:7+Q2lD4p0
【おわり】
18: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 21:05:45.56 ID:7+Q2lD4p0
何かしら感じてもらえましたら幸いです
ここで一旦切ります
html化依頼出してきます
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