鷺沢文香「偽アッシェンプッテルの日記帳」
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11: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 20:59:47.15 ID:7+Q2lD4p0


寝入ったときの姿勢そのままに目を覚ましました。

寝入る前のどんちゃん騒ぎが嘘だったように静まり返り、天井の照明器具が仄かな橙を灯すばかりで、目先の毛布の色さえ判然としません。
聴覚が調子を取り戻してきたのか、エアコンの稼働音の他、部屋のそこここから小さな鼾と寝息が聞こえてきました。
おそらくは酒宴が終わった後、先輩方は雑魚寝することにしたのでしょう。

少しずつ覚醒してゆく意識。

そしてすぐ隣にPさんがいることを思い出し…しかし、左半身に何の熱も感じません。
不思議に思い首を左に曲げてみてもやはり、そこにあるはずの愛しい人の横顔はなく…代わりに、不自然に盛り上がっている毛布の輪郭に気付いたのです。
それは例えば一対の男女が上下に積み重なっていれば、丁度それくらいになるような、そんな盛り上がりでした。

私の体も包んでいるその毛布の盛り上がりは、ゆっくり動いていて…。
毛布とマットレスの間の数センチの隙間からは微かな声が漏れ出てきて…。

“こんなことはダメだ、美波。早くどくんだ”
“Pさんは美波のことが嫌いですか?”


このときのことは…やはり今でも、思い出すだけでも手が震えてきます。
心臓から出血しているのかと思う程に胸が痛みます。
私にとっては呪詛そのものである二人の言葉を思い返し、書き綴ることに本当に意味があるのか…?
ただ傷を大きくするだけなのではないかとも感じています。
いえ…今現在がもう既に地獄でしたね。
そうです、これ以上何を恐れることがあるのでしょう!


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