40:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:59:38.32 ID:WUZ1iABd0
「ガヴ、そろそろ帰らないと夜になっちゃうわよ?」
そう、夜。夜の月を見ると、こんな風な優しい声のあいつを思い出してしまう。
「そうよ、風邪でも引いたら勝負ができなくなるじゃないの!」
41:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:00:22.51 ID:WUZ1iABd0
「……で、いつから見てたんだよ」
私はむすっとして不機嫌を装って聞く。
「ガヴちゃんがタプちゃんたちと別れたところからですね。てっきりおうちに帰るものだと思ってましたが、ルートが逸れたので千里眼で続けて見ていました」
42:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:01:07.90 ID:WUZ1iABd0
「それで?どうしてみんなして私を監視してたのか、理由を聞かせてもらおうじゃん」
「監視だなんて……まあそう言われても仕方ないか。ごめんね、最初はもっと早く会いに行くつもりだったのよ」
「みんなで集まって、私の千里眼でガヴちゃんのいる場所を見つけて、久しぶりに顔をお見せするつもりでした」
43:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:01:53.73 ID:WUZ1iABd0
「私さ、一人でもやっていけるって思ってたんだよ。実際下界に降りた頃は一人で生活できてたし」
「……」
「ヴィーネ、そこで微妙な顔をするな!……まあとにかく、みんな実家に帰っても全然平気だと思ってたんだ」
44:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:02:38.00 ID:WUZ1iABd0
夕日に染まった海を見渡しながら話を続ける。
「この海、覚えてるか?前にみんなで来たことあるだろ」
「ええ、しおりまで作ったんだもの、覚えてるに決まってるじゃない」
45:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:03:26.11 ID:WUZ1iABd0
「そうだ……私の悲しみとか痛みとか、そういうもの全部を癒して救ってくれるのは」
「……お前たちだけなんだよ」
46:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:05:47.04 ID:WUZ1iABd0
全部言い切った。達成感と、解放感。
だけど、この視線と沈黙は……
「……なんだよ。なんか言えよ、お前ら」
47:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:06:53.74 ID:WUZ1iABd0
潮風と涙で、喉の奥がしょっぱさできゅうっと締まる。目が乾燥して、ぱちぱちとまばたきをする。
「ところでさ、今日はみんなこれからどうする?……帰っちゃうのか?」
「ふふっ、そんな顔してるガヴを置いていけるわけがないじゃない。明日まで下界にいられるように許可もらってきたのよ」
48:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:09:06.99 ID:WUZ1iABd0
お喋りしながら駅までの道のりを歩く四人。
「ところでガヴ、あと二週間とちょっとあるけど、ちゃんと生活できるの?」
「ああ、金銭面は大丈夫だよ。天使っぽいことも、たまにはしてるし」
49:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:10:15.68 ID:WUZ1iABd0
がたんごとん、と電車が規則的に揺れる。
私たち四人を、慣れ親しんだ街へと運んでいく。
辺りはすっかり日が沈んでしまって、漆黒の夜空にうっすらと白く月と星が輝いている。
50:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:12:30.66 ID:WUZ1iABd0
天使と悪魔。その存在意義から、相容れることのない種族。
これから将来どうなるかなんて、誰にもわからないけれど。
だけど、そんな心配事なんて鼻息で軽く吹き飛ばせる私たちは固い信頼で結ばれている。
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