43:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:15:23.06 ID:pXJ6Ifkk0
「では、どうしてあの日は、湯呑みを?」
「高かったから……っていうのはウソだけど」
えへへ、と照れながら彼女は――。
44:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:18:53.41 ID:pXJ6Ifkk0
家に帰り、その日のうちに、実家のおじいちゃんに連絡を取ります。
「窯焚きの日だと?」
45:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:22:26.53 ID:pXJ6Ifkk0
プレゼントするものは、もちろん植木鉢です。
元々、焼き物の植木鉢は一般的にも広く用いられているものであり、備前焼も然りです。
46:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:24:33.04 ID:pXJ6Ifkk0
「うーん……」
自宅でノートを広げ、慣れないデッサンと一生懸命格闘します。
絵は不得手なのですが、手を動かさないと、頭の中にあるイメージは具体化できません。
47:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:26:11.69 ID:pXJ6Ifkk0
後日、クリスマス用のキャンドルアレンジメントを作る間も、私は夕美さんの部屋を注意深く観察しました。
部屋の外に置くのか、中に置かれるべきものか。
中の場合は、床か、テーブルの上か――あるいはトイレか、玄関か。
48:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:29:57.93 ID:pXJ6Ifkk0
親指と人差し指を広げ、1、2、3――カウンターの幅は、大体40センチくらいでしょうか。
身度尺という、体の部分に倣った寸法の取り方も、陶芸の世界には関わり合いの深いものです。
49:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:31:44.52 ID:pXJ6Ifkk0
クリスマスパーティーも、大きな問題は無く――Pさんのご尽力もあり、あくまで表面上はですが――終えて、いよいよ正月です。
夕美さんは、わざわざ駅まで私の見送りに来てくれました。
50:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:37:17.68 ID:pXJ6Ifkk0
「出来るのか?」
私のデッサンと紙粘土の試作品を交互に見ながら、おじいちゃんは私に問い質しました。
「手びねりなど、お前ろくにやったこと無いだろう」
51:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:41:31.08 ID:pXJ6Ifkk0
手びねりは玄人向け、という不文律がある訳ではありません。
ろくろでも当然、美しい形状に成型するには熟練した技術が必要になります。
また、体験教室には手びねりコースもあり、ウチの場合、お客さんとしては半々か、ろくろコースの方が少し多いくらいです。
52:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:46:23.09 ID:pXJ6Ifkk0
お正月以降、まとまったお休みを取れる保証はありません。
この期間でどこまで手応えを掴み、完成度を高められるかが勝負です。
53:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:48:39.11 ID:pXJ6Ifkk0
そんな些細なことだけではありません。
成型が佳境に近づくと、作品の仕上げ方についても、私とおじいちゃんはさらに喧嘩するようになりました。
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