28:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:23:04.76 ID:pXJ6Ifkk0
「私は、先生ではありませんよ」
「冷静に返さなくていいじゃん、もう〜。あはは」
夕美さんは恥ずかしがるように笑いますが、とても良い出来です。
29:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:24:54.73 ID:pXJ6Ifkk0
夕美さんに、もう一つ何か作ってみることを提案しましたが、彼女は断りました。
私が作業している様子を、間近で見ていたいのだそうです。
動画も撮ると言いだして、ちょっと困りましたが――渋々、了承しました。
30:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:29:26.95 ID:pXJ6Ifkk0
何より、今回は夕美さんにプレゼントするためのもの。
夕美さんにおさまる花瓶の姿――。
お花でいっぱいのあの部屋、その中に置かれる場所、使ってもらいやすい形状――。
31:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:33:11.23 ID:pXJ6Ifkk0
――――。
――――――。
32:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:35:03.12 ID:pXJ6Ifkk0
焼き物は、ろくろで成型する場合、その多くが左右対称の形状をとります。
お茶碗もお皿も湯呑みも、決まった向きが無い方が使いやすいというのもあるかも知れません。
特に備前焼は、日常生活の中で長く使われるうちに人の手に馴染み、深みが出る陶器でもあります。
33:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:37:26.22 ID:pXJ6Ifkk0
私が、花瓶の口を篦でグイッと歪ませた時、夕美さんが小さく声を上げたのが聞こえました。
「…………終わり、です」
34:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:40:53.88 ID:pXJ6Ifkk0
「………………」
成型を終えたものを、おじいちゃんが厳しい表情で目利きします。
この時間が一番、苦手です。
35:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:42:47.49 ID:pXJ6Ifkk0
おじいちゃんは、冒険心にも似た私の思いを感じ取ってくれました。
厳しい言葉も、裏を返せば、精進さえすれば良いものになるという評価の現れです。
「はい」
36:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:46:35.23 ID:pXJ6Ifkk0
その日から、私と夕美さんは、定期的にお互いの家を行き来するようになりました。
私が夕美さんに生け花を教えてもらい、夕美さんは私の実家に同行してくれます。
無理しなくて良いですよと言っても、夕美さんは鼻息を荒くして岡山まで来てくれるのです。
37:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:50:14.78 ID:pXJ6Ifkk0
そして――。
「夕美、肇……すごかったぞ。お前ら、あんなライブパフォーマンスいつの間に覚えたんだ?」
38:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:52:42.07 ID:pXJ6Ifkk0
目に見えて表現力を身につけている理由をはぐらかす私達に、Pさんは憤慨してみせます。
でも、やっぱり目は笑っていました。
「グラビアの仕事も増やしていこうと思うんだけど、今の二人なら問題無いよな?」
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