4: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:41:37.04 ID:ao4zzOCX0
「おはよ、洋介」
「おお、あかり」
特に約束するでもなく朝は一緒に登校する。当たり前の日常が嬉しい。
5: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:42:52.11 ID:ao4zzOCX0
彼はこともなげに言ってみせる。一度だけ静かに深呼吸をして、一息に話した。
「あたしでよかったら、お弁当作ってきたけど」
6: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:46:11.72 ID:ao4zzOCX0
「いやまあ、そうかもしんないけどさ。それちゃんと食えるんだろうな?」
からかうような彼の言葉に、へそを曲げてしまいそうになる。あたしが今日のためにどれだけ練習してきたと思ってるの。
ほんと、デリカシーがないんだから。
7: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:47:05.51 ID:ao4zzOCX0
昼休みになって、彼と中庭のベンチまで連れ立って歩いた。
薄曇りの空からぼやけた太陽が、まだるっこしく照らしている。
セカンドバッグからお弁当の包みを取り出すと、彼に突きつけた。
包みを掴んだまま、断りを入れる。
8: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:48:31.67 ID:ao4zzOCX0
彼は待てないといったように急いで包みをほどく。
器の蓋をかぱりと開けて、彼が嬉しそうな声を上げた。
それはそうだ。だって彼の好きなおかずを、沢山つめたから。
9: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:49:11.80 ID:ao4zzOCX0
彼がきんぴらごぼうに箸をつける。
あたしはといえば、とても自分の分のお昼ご飯を食べていられるはずもなくて、横目で彼の様子を盗み見ることくらいしかできない。
何度か咀嚼して、彼は飲み込んだ。
だけど、どうしてだか彼は一言も話さない。
10: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:49:48.16 ID:ao4zzOCX0
「なんとか言ってよ、お願いだから」
「すっげえ、うまい」
11: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:51:48.44 ID:ao4zzOCX0
「いままでに食ったことないぐらいうまい、」
最初は落ち着いていた彼の声が、徐々に震えてきているのがわかった。
「なんだよあかり、お前こんなに料理うまかったなんて、ああ、くそ、悔しいぐらいうまい!」
12: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:52:49.69 ID:ao4zzOCX0
あっという間に食べ終えてしまった彼の目線が、あたしのお弁当箱に注がれては、逸らされる。
なにかを我慢しているかのような、でも必死にそれを隠しているような。
あたしはつい嬉しくなって、提案する。
13: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:53:53.59 ID:ao4zzOCX0
「ごめんな、あかりの分まで食っちゃって」
「いいよ、別に」
「最高だった。まじで舐めてかかってた」
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