9: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/06(日) 23:49:11.80 ID:ao4zzOCX0
彼がきんぴらごぼうに箸をつける。
あたしはといえば、とても自分の分のお昼ご飯を食べていられるはずもなくて、横目で彼の様子を盗み見ることくらいしかできない。
何度か咀嚼して、彼は飲み込んだ。
だけど、どうしてだか彼は一言も話さない。
ひょっとして味付けが辛過ぎたのだろうか。内心穏やかでないあたしをよそに彼は今度は煮物を口にした。
同じように、黙りこくったままでいる。
「あの、なにか」
言いかけて、口を噤んだ。一度だけこちらを見た彼と目が合った。
といってなにを言うでもなく、彼の箸は弁当箱の隅に収まった卵焼きを掴む。
そして一切れ、頬張った。
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