31:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 11:24:19.44 ID:uPmb6hplO
私がお風呂から上がった頃、みすずは部屋で勉強をしていたようで、カーペットにぺたんと座る彼女が伸びをしていた。
「なんで下? 机、使いなよ」
「いいの? ありがとう」
32:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 11:39:24.06 ID:uPmb6hplO
私の部屋にはベッドと勉強机と小さい本棚と、それからガラクタの詰め込まれた段ボールが一つ置いてある。
本棚には詩集が収まっていて、小さい頃に読んだ位で、内容は断片的にしか覚えてない。
母はいつも台所の方で寝ていて、元々はこの部屋で一緒のベッドで寝ていたのだけど、
私が大きくなって二人で寝るのがきつくなってきてからは、向こうで寝るようになった。
仕事も不規則で、夜の勤務が多いから、私も帰ってきて起きる羽目にならなくて済むので嬉しかった。
33:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 11:53:08.77 ID:uPmb6hplO
翌朝、目の上が痛かった。
たぶん、うつ伏せか、変な姿勢で寝たんだろう。
寝返りとか打てなかったはずだし。
机の上に湯気の立つ目玉焼きが置かれていた。
34:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 12:02:07.48 ID:uPmb6hplO
お酒とタバコの匂い。
いつもと違う香水の匂い。
どこで誰と会って来たかは分からない。
でも、どうして会うのかは分かる。
35:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 12:18:32.89 ID:uPmb6hplO
そうやって、お母さんは色々な勘違いをして、真実を知って、何度か泣いて、でも、懲りずに繰り返す。
真実は、いつも残酷だものばかりだ。
スッピンになっても可愛いらしい母も席に着き、私たちは食卓を囲む。
「いただきまーす」
36:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 12:41:49.77 ID:uPmb6hplO
学校に行って、まさみに念押しして、買い物行って、と脳内のメモに記す。
「みすず、何か他に欲しい物ある? おやつとか」
「お菓子は、あまり食べないの」
37:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 12:58:31.98 ID:uPmb6hplO
母とみすずに見送られ、学校に向かった。
変なの。
あの家がどんどん知らないものになっていく錯覚。
学校に着いた時、私の顔を見て、まさみが言った。
38:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 13:04:18.46 ID:uPmb6hplO
「まさみも、知らなかった方が身のためだよ」
まさみの瞳が開かれる。
「悪役っぽい」
39:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 13:13:50.01 ID:uPmb6hplO
それでから、悪役にもお母さんがいて、妹がいて、ちっさくてボロい家がある。
みんな、そのボロい家での生活を守るために頑張ってたりするんだ。
私のことじゃない。何かのドラマの話しだ。
私のことじゃないから。
40:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 13:25:36.79 ID:uPmb6hplO
外にも出ずに、植物と戯れるなんて、貴族みたい。いや、お姫様か。
友だちに心配されることもないし、
あれを買おうこれを買おうって悩むこともない。
ガサっと袋が揺れた。
41:名無しNIPPER[saga]
2017/09/03(日) 13:30:52.42 ID:uPmb6hplO
家に帰ると、カーテンがわずかに開いていた。
はっとなって、急いで帰る。
窓辺にいたのは、お母さんだった。
「もお、焦ったじゃん……」
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