31:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:21:31.24 ID:55jPn/3I0
「もちろん、演者を使ったアイドルは一度失敗している。だけど……あまりにも方法が不完全です」
『島村卯月』として私を造らずに、一から教育したこと。
そして、最後まで決断を私に委ねたこと。
32:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:22:29.25 ID:55jPn/3I0
「それはね――」
そう告げると、プロデューサーさんは急にスーツのジャケットを脱ぎだします。
「ふえっ」
33:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:24:20.23 ID:55jPn/3I0
「私は、アイドルになりたかったんだよ――カワイイ、女の子になりたかったんだよ」
「えっと、それは……」
聞き返すと、プロデューサーさんは、昔話をしてくれました。
34:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:25:13.25 ID:55jPn/3I0
「『島村卯月』が居なくなった時、泣いた。もう、彼女に会えないのかと、絶望した」
だけど、プロデューサーさんは止まらなかった。
「諦めたつもりだったけれど、その夢は捨てきれなくて――だったら、自分の理想のアイドルを造りたいと願った」
35:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:26:05.38 ID:55jPn/3I0
この人は、歪んだ夢を、まっすぐに追いかけてきたんだって。
諦めないで、ここまで来たんだって。
「え、ええっと」
36:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:26:46.81 ID:55jPn/3I0
ハッとしたように、プロデューサーさんは目を見開く。
少しだけ、潤んでいるように見える瞳。
「――そうね」
37:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:27:32.96 ID:55jPn/3I0
「そうなるわね。だって、素敵でしょ。見るのも好きだけど、やっぱり『女の子』だったら誰でも憧れるじゃない」
「わかりますっ!」
胸の前で、強く強く、手を握る。
38:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:28:20.74 ID:55jPn/3I0
「……改めて、お願いできるかしら。卯月ちゃん」
いつもような、甘ったるい声。
いつも以上に、真剣な言葉。
39:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:29:30.00 ID:55jPn/3I0
「アナタに、とびっきり素敵な『声』をくれた人のこと」
「それは――」
その人の名を、私も知っています。
40:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:30:41.69 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
オーハシさんとの面会は、すぐにはかなわい、とのことでした。
その間、私は、あの人の映像記録を、何度も見ました。
41:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:31:22.69 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
数日後、一人のおばあさんが、私の前に姿を見せました。
そう、オーハシさんです。
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