二宮飛鳥「美波さんにボクの歌が歌えるわけがない」
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13:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:03:51.54 ID:jKZID4Vr0
世間一般的に必要とされる、求められる存在は間違いなく美波だろう。
いくらマイノリティを気取っても、社会の枠組みからは逃れられない。
日常から外れた存在だとしても、他者がいるからこそ自分が観測される。
14:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:04:44.34 ID:jKZID4Vr0
その存在は、闇から覗くには、あまりに眩しすぎた。
そんな飛鳥の反応に、美波は眉尻を下げた。
「あ……ごめんなさい。失礼なことを言って」
15:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:05:38.93 ID:jKZID4Vr0
ポケットから手を出し、謝罪の意を伝える。
「ごめん、美波さん……こちらこそ、言い過ぎた。本当にすまない」
プロデューサーが「飛鳥と美波で話してみればわかる」と言っていたのを思い出した。
16:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:06:54.70 ID:jKZID4Vr0
少しの押し問答の末、美波はゆっくりと話し出す。
「私も、実は不安なことばかりで」
あんまり、そう見えないってよく言われちゃうんだけどねと、困ったように笑った。
17:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:08:39.16 ID:jKZID4Vr0
「私、実は飛鳥ちゃんに憧れてるんだ」
「え……?」
「飛鳥ちゃんは私と違って強いから、自分というものを持っているでしょう? だから、周囲に合わせたりしなくても、生きていける」
18:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:10:09.48 ID:jKZID4Vr0
どうすればいい。
お互いに一歩、踏み寄ればいいのに、きっとそれは簡単でとても難しいこと。
考えあぐねていたそのとき、親友の顔が頭に浮かんだ。
19:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:11:14.17 ID:jKZID4Vr0
「でもそれは……ボクも同じだよ」
先程、飛鳥が蘭子と接したときと同じだ。
格好良く見られたい、良く思われたい。
20:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:20:07.98 ID:jKZID4Vr0
もしガラスの檻から引き擦り出そうとするのであれば、傷つくときは一緒だ。
「だから、嘘が得意な美波さんに、敢えて言おう。キミはアイドルに何を求める?」
ならば、自分の持ちうる全てでぶつかろう。
21:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:20:56.99 ID:jKZID4Vr0
「心の奥底に、隠しているんだろう? 熱くなれるものを! 青くて痛い、等身大の衝動を! だったら、声を上げるんだ! このボクに、キミの声を聞かせろ!」
美波は気圧されるように視線を逸らす。
そして、意を決したように深く細い息を吐いて、顔を上げ、力強く手を握り返した。
22:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:23:56.90 ID:jKZID4Vr0
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ステージの袖で、黒の衣装と、白の衣装を纏った二人は会話を交わす。
「美波さん、ボク達は表現方法は違えど、結構似た者同士なのかもしれないね」
23:名無しNIPPER
2017/07/14(金) 09:25:35.58 ID:jKZID4Vr0
「ボクはアイドル、偶像なんだ。見る人の心の中に存在する。ボクはボクのセカイを伝えることで、誰かがボクを意識することで、存在を証明できる」
飛鳥は美波に手を差し出した。
新たなセカイに居場所を求めた少女は、欺し、偽り、偶像として立つことで、ステージの上に自分自身を見い出す。
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