7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:27:16.68 ID:sKp9/69N0
俺はやっと思い出した。この子は俺がプロデューサー業をやっていた頃の担当アイドルだった少女たちの一人、龍崎薫だ。
「薫じゃないか。久しぶりだな。どうしたんだ、こんな大雪の中で」
「せんせーに会いたくなっちゃって!」
8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:28:05.18 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜
「えへへ、せんせーのおうち、あったかいね!」
「俺自身寒がりだからな……暑かったら暖房弱めるからいつでも言っていいんだぞ」
9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:29:34.07 ID:sKp9/69N0
スピード、ババ抜き、協力7並べ、ルール追加大富豪。
トランプの定番と言えるゲームをひとしきりやっていると、あることに気づいた。
薫の額に、汗が滲んでいる。
それに心なしかトランプも、少しふやけている。手汗のせいか。
10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:30:05.86 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜〜
ちょうど米を炊いておいてよかった。俺は炊飯器の蓋を開け、
平らな皿にありったけの中身をよそい、もう一枚の平らな皿の隣に並べた。
手を洗い、塩を用意して、握るのに備える。
懐かしい光景だ。あの頃は、もっと他のアイドル達に急かされながら準備していた気がする。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:30:52.08 ID:sKp9/69N0
そんなやりとりをしながら、俺は現役時代の思い出を振り返っていた。
スカウト、オーディション、事務仕事に、送迎。
時には泊りがけのロケでついでにバケーションしちゃったり。
最初期の頃はレッスンなんかも俺がやってたっけな。懐かしい。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:32:09.38 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜〜〜
俺の食いかけのチキンが放置されたリビングに戻ってきた。チキンを机ギリギリに押しやり、おにぎりの乗った皿を真ん中に載せた。
小皿を持ってきて、まだ辛うじて冷めてないチキンの半分を薫に分けてやる。
「いいの?せんせー」
13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:33:25.72 ID:sKp9/69N0
途端に違和感を覚えた。
形の整ったおにぎり、薫の握ったものだが、これがやたらに冷たい。
まるでずっと外に置いておいたような冷たさだ。
「ん、やっぱ暖房切ると冷めるのも早いなぁ」
14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:33:55.51 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜〜
飯を食いながら、俺たちはいろんな話をした。
他のアイドルのこと、ちひろさんのこと、後から来たプロデューサーのこと……
俺の止まっていた時間が、ゆっくりと動き出すようだった。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:34:28.87 ID:sKp9/69N0
食べ終わると椅子から立った薫が
「ごちそうさま!……せんせぇ、またいつか会おうね」
と言った。もう帰るらしい。送ってってやろうかと申し出たら断られた。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:35:24.99 ID:sKp9/69N0
おいおい、いってきますじゃなくてさよならだろうが。
なんて指摘を心の中にしまって、薫が帰っていくのをこの目で見届けて、俺は部屋に戻ろうとした。
刹那。
17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:36:18.90 ID:sKp9/69N0
そして俺は全てを思い出した。
28Res/14.55 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20