6: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:03:27.87 ID:KpRYTezd0
それで誰が彼女のことを責めるだろうか。
交通事故を目の当たりにして即座に冷静な対応ができる人のほうが圧倒的に少ない。
誰も彼女を責めなくても、彼女が許せないのはたった一人だった。
7: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:04:25.73 ID:KpRYTezd0
「意識があるのがわかったら、普通他の対処をするだろ。救急車を呼んだり、警察に連絡するとか」
確かにそうだった。
ただ誰かが救急車を呼んでいたのは覚えている。
8: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:05:15.05 ID:KpRYTezd0
ーーーーーーーー
数週間後。
9: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:05:55.40 ID:KpRYTezd0
「そうだ、茜。ファンレターが届いてるぞ」
プロデューサーはデスク上から1枚の便箋を掴み彼女が見えるように手を少しあげた。
10: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:07:07.23 ID:KpRYTezd0
『日野茜さんへ
初めまして。テレビでいっつも見ています。
日野さんの元気に動き回る姿を見ていると、僕も元気をもらえてやってやるぞ!って気持ちになります。
クイズ番組のばつゲームとか、いろんなことにチャレンジしていつも笑顔でいるのはすごいなって思いました。
11: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:07:49.41 ID:KpRYTezd0
そこには何度も書き直した跡があった。
決して上手な文章ではないけど、とても素敵な文章だった。
「これって……」
12: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:08:43.51 ID:KpRYTezd0
少年は元気だった。
事故のショックに負けず、ポジティブに前を向いていた。
それが出来たのは彼女のお陰。そう書いてある。
「それを読んでさ、俺は改めて思ったんだよ。茜の行動には間違いがなかったって。語り続けることが正解だったんだって」
13: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:09:41.09 ID:KpRYTezd0
「ただそれだけじゃなくてさ、茜は他人の痛みをしっかりとわかるアイドルなんだよ」
それにはどういう意味があるのだろう。
14: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:10:26.78 ID:KpRYTezd0
無意識。
意識をしないでした行動。
常に彼女は無意識で行動していた。
「それで話を戻すけど、あの子からもらったファンレターにはこう書いてある。『泣きながら必死に語りかけてた』。茜はなんで泣いてた?」
15: ◆Rj0X.392Pk
2017/06/10(土) 15:11:20.18 ID:KpRYTezd0
「じゃあ仕事を再開しようかな。茜はこのあとレッスンだな」
話も終わったとみて、彼はデスクに向き直る。
仕事はまだたくさん残っているが、今日だけはどれだけでもできる気がした。
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