80: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/30(日) 05:13:05.60 ID:zE7UP0Tu0
一人称を『私』じゃなくて『青葉』と呼ぶのは、艦娘でいる間は、周りに覚えてもらいやすいようにって思ったからです。
本名じゃどこのどいつだってなっちゃうし、私でも分かりにくいかなって。
そんな『青葉』が、ただの『私』だった頃の話をしましょう。
81: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/30(日) 05:14:04.94 ID:zE7UP0Tu0
夜、青葉はいつものように執務室へ向かっていました。
でも内心は穏やかじゃありません。
秘書艦を終えて、部屋から連絡を入れたんですが…返ってこないんですよ。
これだけだとオーバーに見えそうですが、彼の場合は心配になる要因があって。
82: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/30(日) 05:15:44.48 ID:zE7UP0Tu0
“……これで、誰も入れないよね。”
この時間に執務室を訪ねるのなんて、青葉しかいません。
それでも、鍵を閉めたかったんです。
83: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/30(日) 05:16:26.69 ID:zE7UP0Tu0
そうしてる内に、少しだけ彼が寝返りを打ちました。
青葉のお腹側に顔が向いて…服の裾を、少しだけ掴んで。
可愛い所もあるなぁ、なんて。
……この時間と出来事だけは、青葉だけのものです。
84: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/30(日) 05:17:45.34 ID:zE7UP0Tu0
司令官…青葉の胸の中が、あなたにとっての天国じゃダメでしょうか?
ずっと触れたかった、抱きしめたかったはずの人は、いざ触れてもどこまでも遠くて。
泣いちゃダメだってわかってるけど、考える程に泣けてしまって。
85: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/30(日) 05:18:12.74 ID:zE7UP0Tu0
今回はここまで。
86: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/02(火) 04:18:00.34 ID:UUDRFckKO
「……ああ、時計を外したままだったね。見せてしまったのか、すまない。」
まるで大した事でも無いように、彼はあの微笑でそう言い放ちました。
そんなズタズタの手首を、他人事みたいに…この時少しだけ、怒りすら覚えました。
87: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/02(火) 04:40:31.52 ID:TkF1vjjP0
「最初の戦闘だったね…僕の乗った護衛艦は、近海での戦闘に向かっていたんだ。
その船には、あそこに赴任した頃からいた部隊が乗っていてね。
同期の仲間に、お世話になった上官や先輩。いつもの顔ぶれが揃っていたよ。
88: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/02(火) 04:41:31.77 ID:TkF1vjjP0
「それで…どうやって生きて帰って来たんですか?」
「そうだね…吹っ飛ばされた場所で、とっさに仲間の死体から機関銃を掴んでね。
僕はそいつを担いだまま、傾いた船首に立っていた。
89: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/02(火) 04:42:41.18 ID:UUDRFckKO
言葉が、出ませんでした。
ここまで脳の処理が追い付かない感覚と言うのは、初めてだったかもしれません。
…でも、折れちゃダメ。確かめなきゃいけない事は、まだたくさんあるんだ。
90: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/02(火) 04:43:43.10 ID:TkF1vjjP0
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