87: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/02(火) 04:40:31.52 ID:TkF1vjjP0
「最初の戦闘だったね…僕の乗った護衛艦は、近海での戦闘に向かっていたんだ。
その船には、あそこに赴任した頃からいた部隊が乗っていてね。
同期の仲間に、お世話になった上官や先輩。いつもの顔ぶれが揃っていたよ。
あの日までこの国の軍はね、災害救助や警備が主だった。
上官すら戦闘なんて初めての事で…それも、相手は未知の怪物だ。死の緊張感と、人々を守ると言う意志が船内には混在していた。
そして、いざ敵と対面さ。
まず、甲板にいた一人が頭を撃ち抜かれた。
いや…正確には、頭が飛び散ったのかな。クラッカーみたいな音がして、直後にはもう倒れていたよ。
一人、また一人と撃たれて死んで、それでも士気は下がらなかった。
だけどその時だ、敵の魚雷が飛んできたのは。」
「……船は、吹っ飛んだんですか?」
「……ああ、火薬庫を貫いてね。背中の火傷は、その時のものさ。
壁が厚いし、遮蔽物もあったからね。幸い遠くにいた僕は、飛ばされるだけで済んだ。
…だけどその近くにいた仲間は、バラバラになって海上に浮いてたよ。
僕は船首側まで吹っ飛ばされて、そして船尾から船が沈んだ。
船は上を向く形で、船首だけが顔を出してる状態でね。僕はそこに捕まって、何とか無理矢理立っていた。
海に投げ出された仲間が、噛み付かれて死ぬ断末魔。
爆発で飛び散った死体が、海面に浮く様。
それが沈みかけの船首からは、よく見聞き出来たよ。
その日は快晴だったなぁ…青空と青い海に、血の赤と火の赤が広がっていた。
まるで昼と夕暮れの境目みたいだって…船首からのその光景は、よく覚えている。」
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