青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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88: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/02(火) 04:41:31.77 ID:TkF1vjjP0
「それで…どうやって生きて帰って来たんですか?」

「そうだね…吹っ飛ばされた場所で、とっさに仲間の死体から機関銃を掴んでね。
僕はそいつを担いだまま、傾いた船首に立っていた。

死にたくないとか、勝ちたいとか、そんな事はもう考えていなかったと思う。
大声を上げて、とにかく機関銃をぶっ放した…敵にも浮かんだ仲間の死体にも、次々弾が当たって…。

そこから先は、覚えていない。」

「…じゃあ、目を覚ましたのは…。」

「前話した通り、病院のICUさ。

だけどその前に、違うものを見たよ…。
何もない草原に、真っ赤な花が咲いていて…鳥が鳴いて、潮風と風の音だけで。『俺』はそこに立っていた。」

「……っ!?」

「上を見れば、雲一つない空さ。

悲しくもない、ましてや喜びもない。
ただ穏やかな安らぎだけがそこにあって…感情なんて何処かに消えていて…“ああ、ここが天国か”って、その時思ったよ。

…目が覚めたら、__が抱き付いてきた。
船は沈んだ。仲間が死ぬ様も見た。それは全部覚えてる。
どういうわけか『俺』は生きていて…本来なら恋人との再会を喜ぶか、怒りと悲しみに震えるかしたんだろう。

だけど…不思議なものだね、何も感じなかった。
愛していたはずの__に抱き締められた時でさえ、あの場所以上の安らぎは感じなかったね。」




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