84: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/30(日) 05:17:45.34 ID:zE7UP0Tu0
司令官…青葉の胸の中が、あなたにとっての天国じゃダメでしょうか?
ずっと触れたかった、抱きしめたかったはずの人は、いざ触れてもどこまでも遠くて。
泣いちゃダメだってわかってるけど、考える程に泣けてしまって。
だからその時は、当たり前の事が何処かに行っていたんです。
こんな事をされたら、大抵の人は起きてしまうって。
「…青葉か?」
「……はい…。」
その声色は、いつもと変わらなくて。
青葉が体をどけると、彼はすぐに起き上がって、こちらを見つめていました。
きっと今、青葉はひどい顔をしているでしょう。
みっともない泣き顔で、可愛げも何も無い姿で。
ましてや部下が、自分が寝ている間にこんな事をしていたなんて、幻滅されるかもしれない。
でも司令官は…
「……大丈夫だ、泣かないでいい。」
優しく、青葉の事を抱きしめてくれました。
「青葉…一体どうしたんだい?」
「司令官……。」
触れるべきか、触れないべきか。
この時はまだ、迷いがありました。
でも…もう、後になんて引けない。
だから青葉は、遂にあの事を訊くと決めたんです。
「……青葉、見ちゃいました。
司令官…その手首の傷は、どうしてなんですか?」
この時青葉は、また一つ真実への裂け目に手を伸ばしたのです。
裂け目から落ちる、真っ黒な滴。
ポタポタとこぼれる程度だったそれが、線を描いて漏れていたのはいつからだったのでしょう。
それが青葉の中も、次第に黒く侵食して行く事に目を背けたまま。
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