82: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/30(日) 05:15:44.48 ID:zE7UP0Tu0
“……これで、誰も入れないよね。”
この時間に執務室を訪ねるのなんて、青葉しかいません。
それでも、鍵を閉めたかったんです。
だってそうしちゃえば、本当に二人きりじゃないですか?
誰も邪魔しない、彼の前には青葉しかいない世界。独り占め出来る機会なんて、こんな時ぐらいしかない。
ソファの端は、丁度青葉が座れるぐらいに空いていて。そこにこっそりと座ってみます。
ほんの少し手を動かすだけで、髪に触れそうな距離。
いつか手を掴んでもらった時よりも、この前街へ出た時よりも、今はもっともっと近くて。
起こさないようにそっと持ち上げて…自分の膝に、彼の頭を乗せてみました。
カメラは勿論持ってないし、携帯も出す必要はありません。
今、網膜と脳に刻まれているもの。それ以上に素敵に写す事なんて、きっと無理でしょうから。
眠る顔は、いつかの死体のような無表情じゃなく、人らしい穏やかなもので。
すうすうと寝息を立てる振動が、太腿越しに伝わって。それは青葉にとって心地いいものでした。
今はどんな夢を見ているんでしょう?
優しく髪を撫でて、そうすると心なしか表情が柔らかくなった気がして。
「司令官…青葉は、いつでもそばにいますからね…。」
深く眠る彼に、聞こえる訳もないのに。
こんな事を囁いていました。
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