17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:02:07.34 ID:JSGxJH370
「でも、今『島村卯月』と言う存在が失われると、社会的に大問題になる」
シンデレラガール、島村卯月。一週間の休養でさえ、大騒ぎだったとプロデューサーさんは言っていました。
もし仮に、突然引退となれば、その影響は計り知れないでしょう。
「だから、ステージに立てなくなったあの子に代わって、あなたが作られた」
無言で、ただ頷きました。
18:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:04:14.70 ID:JSGxJH370
◇◇◇
ちひろさんに連れられてビルを降ります。そうして連れられた地下室からは、長い地下道が伸びていました。
最初はいかにも無理やり掘ったような道でした。何度も何度も転びそうにありながら、ちひろさんが持つライトだけ頼りに進みます。
やがて綺麗に整った通路に出ます。薄暗いけど僅かに明かりもある。明らかな人工の通路です。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:05:42.96 ID:JSGxJH370
◇◇◇
草の匂いが香ってきました。お花屋さんでお花や植物の匂いはよく嗅いでいましたが、それとは全く異質な匂いがします。
整った人工物ではなくて、枠に収まらない生命の力が宿った香り。
光の先にあったのは、何処までも広がる草原。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:07:19.01 ID:JSGxJH370
◇◇◇
ちひろさんに連れてこられたのは、何もないお部屋でした。
「――それでは、自分が二番目の『島村卯月』であることは知っているんですね」
隠すこともないので、自分が知っていることを伝えました。もちろん、もう一人の『島村卯月』さんのことは伏せています。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:08:19.59 ID:JSGxJH370
「『島村卯月』たちは、旧世界の中でも一番幸せだった時代に生まれた少女です」
人々が満足し、その先を求めなかった世界。枯れ始めていた地球に目も向けず、ただ娯楽をむさぼっていた時代。
「その時代、アイドルと言う存在は神にも等しいものでした。世界中の人が憧れ、彼女たちに夢中になっていた」
それは、間違いなく人々にとって幸せな時代だった。
「その熱狂を再現して、人々を幸せだった時代に酔わせる。それが、『シンデレラ・プロジェクト』」
22:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:09:10.64 ID:JSGxJH370
その言葉に、嫌な予感がしました。
世界を管理しようという人間が、ただ娯楽を提供するだけで満足するのでしょうか。
この世界そのものの管理――それが、役目だと言うのになら。
「私がシンデレラガールになったのも……かつて、居たアイドルがそうだったから」
「――そうです。すべては、予定されたプログラムです」
23:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:09:48.61 ID:JSGxJH370
◇◇◇
その後、私は何事もなかったかのように街へと戻されました。
空……ドームの天井はすっかり暗くなって、星を模した照明がいくつか光ってます。
「お疲れ様です」
24:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:10:45.16 ID:JSGxJH370
そのままちひろさんと別れると、私は女子寮に帰ります。
もう、消灯時間は過ぎていて、誰ともすれ違わずに部屋に戻れました。
部屋の中は真っ暗で、いっそこのまま眠ってしまおうかとも思いました。
でも、眠る気もおきません。お友達に電話をしようかとも思ったけれど、とても楽しくお喋りは出来そうもありません。
25:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:11:31.04 ID:JSGxJH370
暗い部屋の中で、テレビから溢れる光だけがこの部屋を照らしていました。
映像の中に居るのは、『島村卯月』。私が『島村卯月』になる前に行われたライブ。
客席を覆うのはピンク色のサイリウム。世界を覆いつくすのは『島村卯月』への歓声。
その中で、彼女は歌っている。
26:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:12:27.93 ID:JSGxJH370
黒いちひろさんは、アイドルと言う存在そのものが支配のための道具だと言いました。
アイドルと言う存在を愛すことも、管理者にとって都合のいいことだと言いました。
本当に、そうなのでしょうか?
本当に、私はそう思っているのでしょうか?
「っ!!」
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