715: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:11:07.33 ID:jiMS7eDVO
戸崎「それはわからないな。二分後か二週間後か。張り切るのはいいが、気張りすぎるのもよくない」
デスクのところから戸崎が返事をした。中野はあまり納得していない様子で窓とは反対側にあるソファを指差して言った。
716: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:13:05.58 ID:jiMS7eDVO
それから一日が経過した。佐藤の襲撃はまだなく、永井も無気力に寝ころがったまま。いまは通路のベンチに横たわり、背中をガラス張りの窓に向け太陽の光を浴びて暖まっている。
中野「おい」
717: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2018/11/04(日) 21:15:03.08 ID:jiMS7eDVO
そう言ってから永井は左手を前に持ってくると右肘だけで支えていた上半身をさらに起こし、中野の顔をじっと見据えた。
永井「なあ……おまえにはわからないだろうけど、こんな好条件は二度と揃わない。これが失敗したら、確実に終わりなんだよ」
718: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:16:09.33 ID:jiMS7eDVO
「ギロチンで首を斬られても、数十秒は意識があるらしいね」
と、佐藤が言う。
719: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:17:38.18 ID:jiMS7eDVO
そう言って、佐藤は頭ひとつ投げてよこした。ごろごろ転がってきた。完全な球じゃないから、ときどきぽんと跳ねたりした。眼の前にやってきたそれは長い亜麻色の髪をなびかせ、ぴたりと止まると、その顔を見せた。
美波の顔をしていた。
720: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:19:28.54 ID:jiMS7eDVO
アナスタシアは眼を覚ました、汗びっしょり、三十秒してようやく眼が自分の部屋の天井を認める、あまりの悪夢に泣きたくなる、息を吐く、ベッドから這い出ようとする、パジャマがべっとりしている、冷たい感触に嫌な予感をおぼえる、掛け布団をめくる、人型の染み、地図にはなってない、安堵ともに気が抜ける、落ちるようにベッドから出る、しゃがみこみベッドの縁に頭を預ける、が二度と眠れそうな気がしない。
頭を沈み込ませていると、頸椎に押され皮膚が伸びてゆく感じがした。アナスタシアは額にマットレスの反発を感じつつ、頭のことを考えた。額から後頭部にかけての丸み、そこから首の付け根までを頭のかたちとして意識する。首の後ろの皮膚を張り出している首の骨、ここを絶たれると亜人も死ぬ。正確には断頭され、その頭部を回収範囲外に置かれたまま復活すると新たに頭部が作られる。そのとき、断頭された方の頭部、生まれたときから存続してきた意識は死をむかえる。
721: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:20:45.91 ID:jiMS7eDVO
永井は宗教的な意味での魂とかスワンプマンの思考実験などといった方向から説明するのを一瞬であきらめ、中野とアナスタシアのスマートフォンを頭に見立てて説明することにした。
永井「これをもともとのおまえらの頭部だと思え」
722: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:22:04.22 ID:jiMS7eDVO
中野「おれのケータイ投げたの?」
永井「そうだけど」
723: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:23:33.66 ID:jiMS7eDVO
中野「おい、ケータイ見つかんねえぞ」
中野が助手席の側に寄ってきて、永井に話しかけてきた。
724: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:26:02.27 ID:jiMS7eDVO
中野「手伝ってくれ、永井」
永井「指が擦りむける」
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