新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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722: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:22:04.22 ID:jiMS7eDVO

中野「おれのケータイ投げたの?」

永井「そうだけど」


 「なんで投げたんだよ」と叫びつつ中野は運転席から外に飛び出した。アナスタシアが前部座席で繰り広げられている滑稽なやり取りに呆気にとられていると、スマートフォンがひゅるひゅると縦に回転しながら眼の前にやってきた。


永井「機能的には同じだが、存在的にはまったく別。そのスマートフォンと同じだ。機種変更する前のものと同じデータを保存し、同じ機能を果たすけど、構成している物質はまったく別。スワンプマンが定義的に歴史性を持たないのと同じ」


 アナスタシアは投げ返された自分のスマートフォンを見つめた。蚊を叩くようにパチンと手を合わせて受け止めたそれは、一月ほどまえに買い換えたばかりの新しいスマートフォンで、永井の説明を反芻しながら眺めてみると、どこか見慣れない、いつも使っているものにかたちは似ているけど違和感を放つ物体のように思えてきた。

 もし切り離されたら、切り離されたことに気づいているのは自分だけになる。亜人にとって断頭は、物理的な切断にとどまらず、時間的な切断でもあり──誕生したときから記憶を保存し、細胞を入れ換えながらおおきくなって感情を育んできた器官が経験した年月の切断──、わたしは死んでいるのに、周囲の人間はそのことに気づかない。友だちも家族も気づかない。わたしの死を知っているのは、わたしだけ。それは、あまりにも絶対的な孤独だと、アナスタシアには思えた。



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