新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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244: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 21:57:35.96 ID:7K73HWKCO

ハンドドライヤーがたてる唸った風音が、拗ねた子犬のたどたどしい鳴き声のようになったとき、手を乾かしおわった社員が待っていた同僚にむかって言った。


「このままだと死にそうだな」
以下略 AAS



245: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 21:58:41.43 ID:7K73HWKCO

弟が研究所を脱走した日から、美波の心の大半を自責の念が占めていた。ふさぎこんでいて、この二日間まともに食事もとっていない。軽い鬱のような状態になっていて、意味がわかる明瞭な発音の言葉はほんの二言三言だけしか言わなかった。


美波「あれは助けてた」
以下略 AAS



246: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 21:59:42.54 ID:7K73HWKCO

美波「そうだ、ごはん食べないと」


美波は突然首をまわし、食堂のほうへ顔を向けながら何気ないふうにぼそっとつぶやいた。時刻は午後四時三〇分過ぎ、まだまだ光の状態は日中のときとさほど変わらない明るさを保っていた。突然脈絡の無いことを言い出した美波にプロデューサーは戸惑った。美波は昼食を口に入れいちど嚥下したが、消化する前に嘔吐した、とプロデューサーは寮母から伝えられていた。躊躇いがちに美波に声をかけると、美波はなかば惚けた表情をしたままプロデューサーに向きなおり、力のない声で言った。
以下略 AAS



247: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:00:45.86 ID:7K73HWKCO

美波「レシピは知ってるんです。元気になるレシピ……」


プロデューサーに呼ばれた寮母が手伝い、美波を部屋まで連れていった。ふらつきながら力なくこうべを垂れる美波の姿は、プロデューサーの内面に取り返しのつかない後悔を生み、いまでもその念が彼を悩ませている。
以下略 AAS



248: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:01:46.64 ID:7K73HWKCO

小梅「プロデューサーさん……」


ふたたび赤信号で停止したとき、後部席の小梅が身を乗り出し、ぼそぼそとしたしゃべりを聞き逃さないようプロデューサーの耳元に口を近づけた。
以下略 AAS



249: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:03:24.26 ID:7K73HWKCO

小梅が祝田通りのほうを指差した。プロデューサーは小梅の指の先にある建物に目を向けた。地上二十六階建てのビルがあった。中央合同庁舎第五号館。厚生労働省はこの庁舎に入居していた。


小梅「コ、コンビニに行くだけだから……大丈夫、だよね?」
以下略 AAS



250: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:04:23.89 ID:7K73HWKCO

武内P「白坂さん……ありがとうございます」


小梅の眼がすこしまるくなった。すこしの沈黙のあと、小梅は口を開いた。
以下略 AAS



251: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:06:38.64 ID:7K73HWKCO

誰もいないモニタールームは暗闇に包まれている。戸崎は機器が並ぶ空間へと続く階段に無言のまま腰をおろし、細く引き締まった眼をモニターに向けている。正面の巨大モニターには亜人擁護思想者の個人情報がリアルタイムで更新されていて、この二日間でその数は飛躍的に増えている。


下村「今日ですね」
以下略 AAS



252: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:08:37.30 ID:7K73HWKCO

省前に人々は集まらなかった。いるのは興味本位で携帯を片手に動画を撮ろうとする数人。閑散とした様子を見て、手に持っていた携帯はもう閉まっている。取材に来たテレビクルーも手持ち無沙汰だ。


戸崎「あんなことで人間は動かない。それに、ウェブ上には亜人の実験動画のフェイクなど山ほどある」
以下略 AAS



253: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:11:42.70 ID:7K73HWKCO

小梅は口を開きかけたが、なにも言わないまま車に乗り込んだ。通りの向こうでは頭にタオルを巻いた男が電話している。その男はなにかにぶつかったようによろめいた。男はうしろを確認したがなにもいない。男からすこし離れた位置に半袖パーカーの少年がいてフードをかぶっている。彼は男が前に向き直ったあとも首をめぐらしてなにかを目線で追うようにしていた。

窓から通りの様子を見ていた小梅は、フードの少年は自分の乗っている車を眼で追ったのかと思った。そのときだった。いつもそばにいる「あの子」がなにかに反応を示している。

以下略 AAS



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