249: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:03:24.26 ID:7K73HWKCO
小梅が祝田通りのほうを指差した。プロデューサーは小梅の指の先にある建物に目を向けた。地上二十六階建てのビルがあった。中央合同庁舎第五号館。厚生労働省はこの庁舎に入居していた。
小梅「コ、コンビニに行くだけだから……大丈夫、だよね?」
小梅がいたずらっ子の表情を浮かべていった。プロデューサーは小梅を見つめたまま答えられないでいると、ダメ押しするかのように小梅は言葉を重ねた。
小梅「はやくしないと、漏れちゃうよ?」
かるくじんわりと、胸のすく思いがプロデューサーの内側にひろがった。痛快な反則技、というわけではもちろんない。年齢に見合った他愛のない言い繕いといった発想だが、その他愛のなさがプロデューサーの気持ちを楽にしてくれた。深刻な状況のただなかにいることを自覚しながら、深刻さに押しつぶされないよう工夫する。嘘やごまかしが心を守るために必要になるときもある。
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