245: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 21:58:41.43 ID:7K73HWKCO
弟が研究所を脱走した日から、美波の心の大半を自責の念が占めていた。ふさぎこんでいて、この二日間まともに食事もとっていない。軽い鬱のような状態になっていて、意味がわかる明瞭な発音の言葉はほんの二言三言だけしか言わなかった。
美波「あれは助けてた」
永井圭の研究所脱走の翌日、プロデューサーが厚生労働省前で行われる集会に美城プロダクションに所属しているアイドルや社員は参加しないようにという指示があったことを伝えにいったとき、美波はそのことだけが縋りつくことのできる唯一の救いであるかのように言った。美波の声はちいさくぼそぼそと聞き取りずらかったが、悔い改めよ、と罪人に告げる宗教者の声の響きを持っていた。
プロデューサーは一瞬、美波が何をいっているのかわからなかった。だがすぐに、研究所の屋上から永井圭が研究員を落としたことを指しているのだと気がついた。ニュースでは永井圭は研究員を故意に突き落としたと報道されていた。精神錯乱の状態だったという報道を美波はあきらかに信じていなかった。
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20