253: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:11:42.70 ID:7K73HWKCO
小梅は口を開きかけたが、なにも言わないまま車に乗り込んだ。通りの向こうでは頭にタオルを巻いた男が電話している。その男はなにかにぶつかったようによろめいた。男はうしろを確認したがなにもいない。男からすこし離れた位置に半袖パーカーの少年がいてフードをかぶっている。彼は男が前に向き直ったあとも首をめぐらしてなにかを目線で追うようにしていた。
窓から通りの様子を見ていた小梅は、フードの少年は自分の乗っている車を眼で追ったのかと思った。そのときだった。いつもそばにいる「あの子」がなにかに反応を示している。
小梅「どうしたの……?」
武内P「なにか?」
小梅「あの子が……」
小梅はあとの言葉を口にしなかった。
小梅 (怯えてる……?)
小梅はふたたび厚労省前に視線を向けたが、なにかがいるようには見えなかった。プロデューサーの運転する車はコンビニをあとにし、祝田通りを抜け、プロダクションに向けて走っていく。送迎車の頭上を空を舞う鳥達が入れ替わるように通過していく。
ちょうどそのとき、ビル群の隙間を行く鳥達に猛烈な空気の乱れが襲いかかる。均整のとれた群れのかたちは頭上から吹きつけてくる風に崩され、集団はばらばらになる。すこしして群れは元どおりになるが、いきなり吹いてきた強い風がなぜ起こったのか、鳥達が理解することはなかった。
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