京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」
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10:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:17:58.03 ID:B6wfBn3i0
そのころからだったと思う。俺が彼女たちの近くにいることを、苦痛に思い始めたのは。
 別に彼女たちが悪いわけではない。ある意味これが光栄なことなのだということも理解していた。
 やがて世界で羽ばたく才能を持ち合わせた彼女たちの成長をこんな間近から見れて、あわよくばその手助けができる、
 でも俺にできる手助けなんて、本当に雑事だけだ。誰でもできるような、代わりの利くことだけだ。
 なんて贅沢な奴だとも思う。彼女たちの傍にいられるだけで、それは途方もない幸運だ。なのに、俺はそれを苦痛に感じている。なんて嫌な奴だ。堂々とした打ち方もできない、卑怯な上に自分の分を弁えないやつだ。
以下略 AAS



11:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:18:47.91 ID:B6wfBn3i0
 長野県、清澄高校。
 今や国民的競技になった麻雀のインターハイ、その団体戦で、初出場ながらに全国ベスト4の記録を残し、その名は一躍有名になった、
 大会の終わった12月の今でも、ひっきりなしに取材の依頼が来る。大会終了直後ほどでもないが、週に1回は取材の申し込みが来る。
 が、下手に部活の練習時間を削りたくはないので、出来る限り断っている。主に麻雀部唯一の男子部員こと俺、須賀京太郎がその対応をする。
 相手も素直に引き下がってはくれないから、断るのには毎回骨が折れる。今日は学校の職員室で、20分も粘ってきた雑誌の編集部からの電話を断らなければならなかった。
以下略 AAS



12:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:19:41.35 ID:B6wfBn3i0
 だが足は無意識に近いレベルで勝手に部室へ向かってしまう。
 やけに立派な両開きのドアの前で深呼吸。こんな辛気臭い顔で、みんなの集中力を削いではいけない。
「よしっ………」
 勢いよくドアを開けて、半年前までそうしていたように明るい声を出す。
「すんませぇーん、遅れましたぁー!」
以下略 AAS



13:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:20:34.57 ID:B6wfBn3i0
 外はかなり寒かった。
 長野の12月ということで、度々降って溶け残っては新しく前より高く積もった雪が敷き詰められていた、
 異様に濃い灰色の空模様からしても、今夜あたりにもう一度降るだろう。
 携帯を取り出して時間表示を見る。時刻は午後5時前。今日もみんなに付き合って帰れるのは8時を過ぎるだろうから、もしかしたら帰りの時間帯にはもう降り始めているかもしれない。
 そう思うと、胸の中の重しが、さらに心にのしかかってくる気がした。
以下略 AAS



14:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:21:15.92 ID:B6wfBn3i0
「いやいやいや…………」
 これも勉強だと、自分でも納得できるわけのない答えで不穏な考えを無理やり振り切り、アイスバーンで滑りやすくなった道を気をつけて進む。
 学校の周り、というかこのあたり一帯は坂道のオンパレードだから、本当に冗談ではなく転んだらそのまま坂道を滑って行って、車が来ても避けれずに轢かれるなんてこともあり得る。
「うわぁ!」
 ズザァ! と、そんなことを考えたそばから足を滑らせる。が、幸いにしてその場で尻餅をついただけだった。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage]
2016/08/22(月) 21:24:17.73 ID:qZfhVOrZo
京豚いい加減にしろよ


16:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:28:22.76 ID:B6wfBn3i0
 学校から一番近い雑貨店に着くだけでも、雪に足をとられて30分以上かかった。
 今から学校に戻ると、きっと6時を過ぎていることだろう。
「まいどありー」
 店主の声を背に、店の外に出ると、なんと目の前にはもう白い結晶がひらひらと舞っていた。
 もう真っ黒になった空から、青白い雪が降ってくる。
以下略 AAS



17:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:29:51.64 ID:B6wfBn3i0
「おい、にいちゃん……」
「え、あ、あ、はいっ!?」
 いきなり声をかけられ、背を伸ばして答えてしまう。
「ほら、お前の番だぜ」
「あ、は、はい」
以下略 AAS



18:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:30:41.96 ID:B6wfBn3i0
「なぜ………って、顔だな。本当にみりゃあわかるんだよ。人っていうのは輝きを放つものなんだ。その輝きは、いかに自分の魂が満たされているかで決まる。自分の心が解放されていて、いかに自由で在れるかってことだ。兄ちゃんの心は曇っちまっている。だから兄ちゃんの見た目も煙っちまっているのさ」
「俺の、心…………」
「こんなご時世だ。兄ちゃんくらいの年なら、お受験だの将来何がしたいだので悩むころだろうよ。自分が何をしたいのかもわからず、ただ周囲に理由もなく急かされる。だが…………そんな中でも、兄ちゃんの煙り方は異常だった。まるで、自分がどこにいるのかもわからず、しかもどこで何をするべきなのかもわかっていないんじゃないのかってくらいにな」
「どこで……何を………」
「自慢じゃないが、俺はそういうことからは一番縁遠い場所で生きてきたと思っている。自分が何をしたいのか、わからなくなったことなんて一度もない。やりたいことが増えたことはあれども、なくなったことはない。世間一般に胸を張れない人生だったが、それでも、俺は俺に胸を張れる。俺はこれだけ自分の望むままに生きたぜっ………てな。兄ちゃん…………お前、今の日々を、自分に胸張って自慢できるか?」
以下略 AAS



19:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:32:12.14 ID:B6wfBn3i0
学校に戻れたのは、6時すぎどころか、7時前だった。
 雪は冗談抜きに強くなってきていて、傘が無いと辛いほどだった。
 下駄箱のあたりで服に着いた雪と水滴を落として、誰もいなくなった真っ暗な旧校舎の中を進んで、部室へと急ぐ。
「………………?」
 するとおかしなことに気が付いた。
以下略 AAS



20:名無しNIPPER
2016/08/22(月) 21:34:14.03 ID:pPOToaoxO
つまんね


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