京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」
↓
1-
覧
板
20
12
:
スレ主
◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:19:41.35 ID:B6wfBn3i0
だが足は無意識に近いレベルで勝手に部室へ向かってしまう。
やけに立派な両開きのドアの前で深呼吸。こんな辛気臭い顔で、みんなの集中力を削いではいけない。
「よしっ………」
勢いよくドアを開けて、半年前までそうしていたように明るい声を出す。
「すんませぇーん、遅れましたぁー!」
どこか気の抜けた笑みを浮かべて、悪びれた様子もなく明るく部室に入る。
「いやぁー、今日の取材の申し込みはしつこくってぇー。骨が折れましたよー」
笑顔を浮かべて閉じていた目を開く。思っていた通り、みんなは1台しかない麻雀卓を囲んでいた。
一人余っているのは染谷先輩だ。眼鏡の奥にある目を鋭く光らせて、卓を囲む4人の手牌を眺めて牌譜をとる。
あの人は牌譜と記憶を結び付けて麻雀を展開していく人だから、自分で牌譜をつけると言い出したのだろう。
みんなの集中力はすさまじく、誰も俺のことを気に留めてもいなかった。
インターハイが終わっても、麻雀の大会は他にもある。年の初めにあるアマチュア大会に向けて、ここ最近の皆には鬼気迫るものがある。
学生限定ではないから竹井先輩だって出れる。あの人はプロチームの内定をもらえたから、普通は引退するはずのこの時期でもまだ部活に来ている。
一応俺も男子の部個人で大会には出るのだが、きっと1回戦で負けるのは皆の間では暗黙の了解となっていることだろう。
「ん……・おお、来たか犬! 早速タコスたのむじぇ!」
唯一、ドアと向かい合う席に座っていた優希が俺に気付いたようだった。
「はいはい、仰せのままに」
「あ、済みません須賀君。私にもコーヒーをお願いできますか?」
「うぃーす」
「あ、京ちゃん私も」
「へいへい甘めでだな?」
「いつもの」の一言で通じそうな優希の注文に加え、和と咲からも飲み物の催促が来る。
いつもやっていることなので、俺は上着を脱いですぐにその作業に取り掛かった。
備え付けの簡易コンロに火を灯そうとする。しかし、何度かカチカチと音がするだけで、火は中々つかない。
「あれ? ガス切れかな?」
ボンベに目をやると、残りガス量の目盛がほぼ0になっていた。
小道具の入った引き出しの中を見るが、替えのボンベは無いようだった。
窓の向こうは今にも雪が降りそうなほどに冷えていたが、仕方なく俺は脱いだばかりの上着にもう一度袖を通し、カバンの中からマフラーを取り出して首に巻く。
「すいません、ガスボンベが空になっちゃってて。急いで買ってきます」
「ん……・・・」 「うん………」 「さっさとたのむじぇ」
対局に集中している皆から帰ってきたのは、そんな気の乗らない返事だけだった。
胸の中を若干重くしつつ、俺は部室の外に出た。
<<前のレス[*]
|
次のレス[#]>>
660Res/374.36 KB
↑[8]
前[4]
次[6]
書[5]
板[3]
1-[1]
l20
京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」-SS速報VIP http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1471867742/
VIPサービス増築中!
携帯うpろだ
|
隙間うpろだ
Powered By
VIPservice