京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」
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14:スレ主 ◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:21:15.92 ID:B6wfBn3i0
「いやいやいや…………」
 これも勉強だと、自分でも納得できるわけのない答えで不穏な考えを無理やり振り切り、アイスバーンで滑りやすくなった道を気をつけて進む。
 学校の周り、というかこのあたり一帯は坂道のオンパレードだから、本当に冗談ではなく転んだらそのまま坂道を滑って行って、車が来ても避けれずに轢かれるなんてこともあり得る。
「うわぁ!」
 ズザァ! と、そんなことを考えたそばから足を滑らせる。が、幸いにしてその場で尻餅をついただけだった。
「いってぇ!?」
 尻に、何かが刺さった。
 痛みの走ったあたりを手で触ると、ポケットの中に、何か固いものが入っていた。
 涙目になりながら取り出すと、それはいつも持ち歩いているお守りだった。
 5年前に亡くなったひいじいちゃんが、亡くなる少し前に俺にくれたものだ。
 「清寛寺」と掠れた刺繍の入れられたそのお守りの中には、小さな石が入っている。
 ある面だけは磨かれていてとてもきれいなことから、多分墓石のような人為的に手の加えられたものの一部分だろうとはわかる。
 でも、何で墓石がお守りの中に入っているのか? そう思って、俺はひいじいちゃんに聞いてみた。
『そいつはな、博打の神様の加護があるのさ。俺の知り合いに、井川っていうまぁこれがめちゃくちゃ麻雀の強い奴がいてな。そいつの死んだ師匠が、その神様だったのさ。無理言って、その墓石の欠片を分けてもらったんだ。こんなしょぼい俺にでも、少しは麻雀の神様のご加護があるんじゃないかってな』
 かっかっかと笑いながら、じいちゃんはこの石の自慢をしていた。
 後に知ったことだが、その井川というのは、現役プロ雀士の井川ひろゆき7段らしい。
 もうあんまり覚えていないが、ひいじいちゃんの葬式に、井川プロも来ていたそうだ。
 親から聞いた話で、井川プロは葬式の時俺に向かって「その石を大事にしてくれよ」と言っていたらしい。
 今じゃあ国民的アイドルのプロ雀士のお墨付きのお守りということで、俺は当時からずっとこのお守りを肌身離さず持っている。
 が、俺のケツはどうやら守ってくれなかったようだ。
 やれやれと息をついて、お守りを前のポケットに入れなおし、俺は坂道を下りて行った。



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