京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」
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スレ主
◆EvBfxcIQ32
2016/08/22(月) 21:28:22.76 ID:B6wfBn3i0
学校から一番近い雑貨店に着くだけでも、雪に足をとられて30分以上かかった。
今から学校に戻ると、きっと6時を過ぎていることだろう。
「まいどありー」
店主の声を背に、店の外に出ると、なんと目の前にはもう白い結晶がひらひらと舞っていた。
もう真っ黒になった空から、青白い雪が降ってくる。
「ふえっくし!」
寒さに負けた俺は仕方なくもう一度店の中に戻り、レジの傍の棚に会った温かいコーンスープを手に取る。
学校までの燃料は、これで足りるだろう。
火傷をしそうなくらい熱いカンを握り締めた俺は、もう一度レジに並ぶ。
すると俺の前に並んで煙草を買っていた客が、目に入った。
背はかなり高い。182センチある俺とほぼ同じ目線だし、男性だろう。
横顔から分かるように、50を過ぎたと思しきしわが顔中に刻まれている。
髪はくすんだ銀髪といった感じで、きっと元から銀髪なのが老化とともにくすんだ白を帯び始めたのだろう。
身なりは一目でこのあたりの人間じゃないと分かった。赤と黒の斑模様、黄色と黒だったら某球団のチームカラーのような感じのシャツの上に、髪の毛と同じような白いジャケットとズボンをはいていた。
地元の人間なら、真冬にこんな格好はしない。
そしてその目。
「――――――ッ!」
その人と目が合った瞬間、俺は自分の意識がどこか遠い場所にぶっ飛んだような感覚を覚えた。
気配、とでもいうのだろうか。その人の気配は、尋常ではなかった。
漫画じゃあるまいし、俺は相手を見ただけで戦慄するとかそういうことは、現実にはないことなんだろうと思っていた。
けれどたまに、ほんの時たま似たようなことはあった。
初めて部室で本気の咲を見た時のような、龍門渕や白糸台高校の代表選手のような、化け物と言われる人間を見た時に、ほんの少しだけだけど、恐怖に似た感覚を覚えることはあった。
でも、この人は―――。
この人は違う。何もかもが。纏っている空気も、帯びている気配も。
人ではないと言われても信じてしまいそうな。
全力の咲や咲のお姉さんでも霞んでしまいそうな、圧倒的すぎる存在感。
俺はその場に釘付けになったまま、一歩も動けなかった。
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