勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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167:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:21:35.92 ID:GzXa1Wz40
勇者と戦士は迎賓館を抜け出し、王宮内のテラスにやって来ていた。
ここはかつて勇者が善の国の神官長と語らった場所で、武の国の町並みを一望できる。
魔王討伐に沸く町はいつまでも祭りの如き喧騒に包まれていて、絶えることなく揺れる町の灯が何とも幻想的な風景を造り出していた。
戦士「綺麗……」
168:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:24:03.69 ID:GzXa1Wz40
戦士の問いにキョトンとする勇者だったが、何とか戦士の意図を汲み取ろうと頭をフル回転させた。
勇者(なるほどつまり、戦士はエルフ少女と比べて自分の魅力に劣等感を抱いてしまってるというわけだ。同じ金髪だしね。仕方ないね)
勇者(ならば俺の次なるミッションは戦士がエルフ少女に抱く劣等感を払拭してやる事!!)
169:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:24:47.79 ID:GzXa1Wz40
170:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:25:37.14 ID:GzXa1Wz40
パーティーも終わって、翌日。
武の国の会議室には各国の代表とその護衛が再び集められていた。
勇者は会議室に集まった皆の顔をゆっくりと見回し、言った。
勇者「今回皆様にこうしてお集まりいただいたのは今後の方針について提案をさせていただくためです」
171:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:26:14.84 ID:GzXa1Wz40
勇者「我々の精霊加護を底上げし、相対的に魔物の力を押さえつける宝術。この宝術無くしてこの度の我々の勝利は有り得なかった。そうでしょう?」
勇者「しかし宝術はあくまで土地の精霊に働きかけ、その力を強めるもの。魔界にはその土地の精霊が存在しない。もしかしたらそれに類する存在はいるかもしれないが、それらがこちらの宝術に反応してくれるわけがない」
勇者「宝術が使えない以上、こちらの勝利は絶望的だ。なんせ、『光の精霊』の加護を得ていた我が父、『伝説の勇者』ですら大魔王討伐を成すことが出来なかったのだから」
172:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:26:46.08 ID:GzXa1Wz40
173:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:27:44.72 ID:GzXa1Wz40
抜けるような青空の下、とある教会で二人の男女が多くの人々の祝福を受けていた。
教会の入口から出てきた男女に、周囲の人々から色とりどりの花びらが散りばめられる。
男女は幸せそうに笑みを浮かべながら、人々の列の真ん中を歩んでいく。
女性が身に纏っているのは、純白のウェディングドレスだ。
つまり、結婚式である。
174:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:29:32.80 ID:GzXa1Wz40
それから、勇者は魔王軍残党の討伐隊として世界各地を転々とした。
魔物の残党の中で今の勇者を苦しめられるものなど存在せず、勇者は危なげなく魔物を討伐していった。
175:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:30:51.75 ID:GzXa1Wz40
騎士『魔王城の奥にな、底を覗き込んだ時に何故か空が見える変な泉がある。それが魔界への入口だ』
騎士『魔界で精霊加護が維持できるか? ああ、それは大丈夫だ。ただ、魔界には精霊なんてものが存在しねえから、新たに精霊加護を得ることが不可能だ。つまり、魔界ではレベルアップが出来ない』
176:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:32:54.80 ID:GzXa1Wz40
勇者の脳裏に浮かぶのは、『あの時』騎士と交わした最後の会話。
ずっと忘れようと思っていた。
ずっと、気にしないように努めていた。
だけど、駄目だった。
父の墓の前で今でも涙を流し、ふとした時に深いため息をつく母の姿を見るたびに、胸が締め付けられる思いだった。
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