勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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168:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:24:03.69 ID:GzXa1Wz40
戦士の問いにキョトンとする勇者だったが、何とか戦士の意図を汲み取ろうと頭をフル回転させた。
勇者(なるほどつまり、戦士はエルフ少女と比べて自分の魅力に劣等感を抱いてしまってるというわけだ。同じ金髪だしね。仕方ないね)
勇者(ならば俺の次なるミッションは戦士がエルフ少女に抱く劣等感を払拭してやる事!!)
自身の導き出した結論に何ら疑いを持たず、勇者は口を開く。
勇者「エルフ少女? あー、エルフ少女ね。彼女も確かに綺麗だ。まさしく人間離れしていると言っていい。だけどね、僕は君の魅力が決して彼女に劣っているとは思わない。いや、僕個人の好みの話で言えば、むしろ君の方が魅力的だよ。だから、君は(自分が魅力的な女の子だと)自信を持っていいんだ」
戦士(『俺がお前のことを好きだという事に自信を持っていい』だとぉ…!? 何だこいつ、言ってることがまるでスケコマシじゃないか! 自信満々にこんな事……コイツ、本当はすごく女慣れしてるのか!?)
勇者は己の任務として一度こうすると定めたなら、迷いなくそのための最善手を選択するプロフェッショナルである。
そこには躊躇いも衒いも無い。
戦士(くそぉ…!! こんなチャラチャラした言い回しは私の大っ嫌いなもののはずだ……なのに何でこんなに嬉しいと思ってしまうんだぁ…!!)
ぼん! と戦士の頭から蒸気が噴き出し、戦士は思わず勇者から顔を背けて両手で自分の顔を覆った。
その様子を見て、勇者は己の任務達成を確信し、ぐっとガッツポーズをする。
勇者(エルフ少女……そういえば、彼女は戦いの後に『自分の矮小さを思い知った。私は君の傍にいるには相応しくないようだ』と言い残し、姿を消してしまった)
勇者(彼女には本当に世話になって、まだまだ何の恩返しも出来ていないのに……)
勇者「会いに行かなきゃな、エルフ少女に」
戦士「 な ん で だ キ サ マ ! ! ! ! 」
勇者「ひええ!?」
ぐわっ! と牙を剥かんばかりに勇者に食って掛かった戦士だったが、すんでの所で思いとどまり、頭痛をこらえるように頭を抱えた。
戦士(わ、わからん…! 何のつもりなんだコイツは…! もしかして私は弄ばれているのか? マジでコイツはプレイボーイのスケコマシで、私はその術中に陥ってしまっているのか…!?)
勇者「…!? …!?」ドキドキ…!
煩悶する戦士の様子を勇者は恐る恐る伺っている。
やがて戦士はふぅー、と大きく息をついて、勇者の方に向き直った。
戦士「まあ、いい。どうせ、私の取るべき道はひとつだ」
戦士は決意に満ちた瞳で勇者を見つめている。
その表情に、先ほどまでの狼狽は欠片も無い。
戦士「勇者。私はもう、先日のような無様な姿を晒しはしない。お前一人に全てを押し付けずにすむよう、私は強くなる。そして私はお前の傍に立ち続け、お前の為に剣を振り、お前の負担を分かち合う。そのことを今ここで誓おう」
凛とした瞳に射抜かれ、勇者は面映ゆくなってぽりぽりと頭を掻いた。
勇者「……ありがとう戦士。戦士がそう言ってくれることは凄く嬉しい」
勇者の顔に笑みが浮かぶ。
勇者「……だけどもう、必要ないんだ」
戦士「必要ない? どういうことだ? むしろ必要なのはこれからだろう。魔界にはまだ、大魔王が控えている。私達の戦いはこれからが本番のはずだ」
戦士の言葉に、勇者は首を横に振って、はっきりと口にした。
勇者「魔界には行かない。大魔王を倒さずとも世界を平和にすることは出来る。俺達はもう、戦わなくていいんだ」
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