勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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167:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:21:35.92 ID:GzXa1Wz40
 勇者と戦士は迎賓館を抜け出し、王宮内のテラスにやって来ていた。
 ここはかつて勇者が善の国の神官長と語らった場所で、武の国の町並みを一望できる。
 魔王討伐に沸く町はいつまでも祭りの如き喧騒に包まれていて、絶えることなく揺れる町の灯が何とも幻想的な風景を造り出していた。

戦士「綺麗……」

 ぽつりと呟いた戦士の、思わぬ艶やかさに勇者はどきりとしてしまう。

戦士「……ふん。なんだ、先ほどから呆気にとられた顔をして」

勇者「……いや、いつもと雰囲気が違い過ぎて、その」

戦士「似合わないのは自覚しているよ。武の国の侍女から是非にと勧められて着てみたが、こういうのはもっと淑やかな女性が着るべきだ。こんなに筋肉がついた肩を晒して、みっともないったらありゃしない」

勇者「き、筋肉…? ええ…? そりゃ確かに普通の女の子に比べれば筋肉あるとは思うけど、逆に戦士細すぎるでしょ。何で俺より細いの。そんなんでどうやってあの剣振ってんの」

戦士「私の筋力の高さはあくまで地の精霊の加護によるものだからな。素の腕力ならおそらくお前とそんなに変わらないさ」

勇者(あ、でも素の腕力ちょっと鍛えた男並みにはあるんっすね。コワイ!)

戦士「お前は細いというが、やはり一般的な女性に比べれば段違いに太い。今日パーティーに来ていた貴族の娘たちを見て思い知った……似合わんことはするもんじゃないな」

勇者「そんなことねえって!!」

 少し悲しそうに目を伏せた戦士に、勇者は思わず大声を上げていた。
 戦士が目をぱちくりとして勇者を見る。

勇者「あ、やー、その……」

 勇者はしどろもどろになりながら言った。

勇者「さ、さっきも言ったとおり、俺は全然太いなんて思わないし、むしろ細いと思ってるし、めちゃ綺麗だよ、戦士。俺、戦士見てぼけっとしてただろ? 正直、見惚れてた」

戦士「な、な、」

勇者「戦士カワイイ! 可愛いよホント! カワイイ! カワイイ!」

戦士「ふあ…!?」

 戦士へのフォローのつもりで喋っていた勇者だったが、喋っているうちに恥ずかしくなって、それを誤魔化すために妙にテンションが上がって、何だかどストレートに戦士を褒めちぎりだした。
 戦士の顔が真っ赤に染まる。
 戦士は自分の心臓の音が高まり、全身が一気に熱くなったのを自覚した。

勇者「それに戦士さっき言ってたじゃん! 男に言い寄られまくってるって! モテモテやん! モッテモテやんキミ!! ヒュウー! 僕も惚れてまうわこんなん!!」

 羞恥心を誤魔化すための暴走で謎のチャラ男と化した勇者の言葉に、戦士が敏感に反応した。

戦士「ほ、惚れ…!? お、おまえぇ!! 本気か!? それ本気で言ってるのかオマエ!!」

勇者「本気も本気!! ちょーマジホンキっすよパイセン!!」

戦士「いいのか!? 私も(お前が私に惚れたという事を)本気にするからな!?」

勇者「しちゃいなYO! YOU(自分が魅力的な女の子だっていうのを)本気にしちゃいなYO!!」

 ぷすぷすと戦士の頭から湯気が上がり出す。
 勇者は戦士が女としての自信を取り戻したものだと確信し、自分の仕事に満足感を覚え拳をぐっと握った。

戦士「で、でも……」

 もじもじとしていた戦士は、おずおずと口を開いた。




戦士「お前……エ、エルフ少女のことは、どうするんだ?」


勇者(何故ここで突然エルフ少女の名前が……?)キョトンヌ






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