勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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171:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 11:26:14.84 ID:GzXa1Wz40
勇者「我々の精霊加護を底上げし、相対的に魔物の力を押さえつける宝術。この宝術無くしてこの度の我々の勝利は有り得なかった。そうでしょう?」

勇者「しかし宝術はあくまで土地の精霊に働きかけ、その力を強めるもの。魔界にはその土地の精霊が存在しない。もしかしたらそれに類する存在はいるかもしれないが、それらがこちらの宝術に反応してくれるわけがない」

勇者「宝術が使えない以上、こちらの勝利は絶望的だ。なんせ、『光の精霊』の加護を得ていた我が父、『伝説の勇者』ですら大魔王討伐を成すことが出来なかったのだから」

勇者「いや、それ以前にそもそも、我々の持つ精霊加護が魔界でも維持できるのかすら疑問だ。もし精霊加護が消失してしまうとしたら、我々は一般の民とそれほど変わらぬ動きしか出来なくなる。勝てる道理が無い」

勇者「だから―――次善の策しかないのです。私の提案では確かに、根本的な解決には至らない。常に魔界の出入り口を監視しなくてはならないという負担も生じる。しかしそれでも――――確かに世界に平和をもたらすことは出来るのです」

 ―――沈黙があった。
 誰も彼もが苦虫を噛み潰したような顔になって、勇者の言葉を飲み込んでいた。
 再び手を挙げて発言したのは善王だった。

善王「魔王城の出入り口を塞いだところで、また別の所に出入り口を造られたら意味がないのではないか?」

勇者「その可能性はほとんどないとみています。理由は、この十年余りの間、魔王城以外の出入り口が造られていないからです。異界への出入り口を簡単に造れるのならば、世界中の至る所に造っていたでしょう。その方が、この世界を侵略する上で遥かに効率がいい」

勇者「それをしなかったということは、大魔王にとっても異界への出入り口を造るということはそう軽々には出来ることではないと、そう推測できます」

 勇者の説明に、善王は納得したようだった。
 勇者は参列した諸国の王の顔を見回す。

勇者「他に質問は…? ……無いようでしたら具体的な段取りの話に入らせていただきたいと思います」





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