135: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:08:41.75 ID:sMuggt4e0
無論、バカな私でも解っている。司令官の隣は、今や“あの人”の指定席だって。“あの人”と司令官の間に、私が入れる隙間なんて1ミリもありはしないって。
それでも、私はバカだから、できないんだ。戦いもせず、ただ諦めるなんて。
(………龍驤さんには、恋も、戦いも、負けません!!)
136: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:11:19.70 ID:sMuggt4e0
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137: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:15:00.65 ID:sMuggt4e0
精神状態良化・高揚に伴う艤装性能限界突破現象───という正式名称は長ったらし過ぎるので“キラ付け”なんて俗称がつけられたこの状態は、駆逐艦娘が戦艦棲姫を沈めるほどの劇的な効果さえ時としてもたらす。故に各鎮守府、特にここを含めた【海上機動迎撃網】の構成府や最前線である東南アジアの特派府・泊地群はその維持に腐心している。
そして実際、眼前の比叡さんの暴れぶりを見ていれば関連事案を法制化するほどの重要視ぶりも納得だ。あくまで数値的には榛名さんに対空性能で遅れを取り、噴進砲や電探連動型の高角砲等の特殊装備もなし、三式弾だって改装前の通常型。
にも関わらず、比叡さんは殆ど単艦に近い状態であの大編隊を押し返しているのだから。
138: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:17:53.75 ID:sMuggt4e0
かく言う私自身はといえば、無論提督さんのことを憎からずは思っている。とはいえそれは龍驤さんや比叡さんのような恋慕ではないし、妙高さんが抱いている世話焼き的な母性(……或いは野次馬根性)とも違う。
榛名さんや大鳳ちゃんがよく口にするその力量に対しての「敬意」と、“かわうち”の悪友的な「友情」、その中間というのが多分一番近いかな。
では二人と比較して、私のこの戦いに対する覚悟や決意は弱いのか?…………そう問いかけられれば、胸を張り、声を大にして言える。
139: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:20:18.88 ID:sMuggt4e0
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140: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:29:11.45 ID:sMuggt4e0
この鎮守府に留まらず、【海上機動迎撃網】全体へと行われた一大攻勢。経路・艦隊規模・戦況推移、何れも横須賀司令府が事前に立てていた予測内容とほぼ完全に一致する。
当然、とまでは言えないが十分に納得はできる結果だ。何せ八頭や海自屈指の秀才(かつ危険人物)と名高い例の一等海尉を筆頭に、三自衛隊と在日米軍、各司令府所属の提督達が各々の知略をフル回転させ総力を挙げて解析と議論、改訂を重ねているのだから。
仮に“全て”予測通りであったなら、少なくとも日本列島戦線に関しては持ち堪えるどころか十分な余力を以て反転攻勢さえ可能としただろう。
141: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:34:29.08 ID:sMuggt4e0
「あ、あの………小栗提督代理、大丈夫ですか?」
「ん………あぁ」
凄まじい勢いで戦況報告と艦娘や館内人員、妖精たちへの指示が飛び交う中で漏れ聞こえてくる暗く陰鬱な“噂話”。否が応でも耳に入ってきてしまうそれらに思わず眼鏡をずらし眉間を抑えていると、手元にスッと湯気を立てたお茶が差し出される。
142: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:37:43.75 ID:sMuggt4e0
突拍子もない申し出ではあったが、その御蔭で落ち着けたこともまた事実。そして辺りを見る余裕が出てくれば、司令室全体が不安と疲労に擦り潰されそうな有様となっていることが直ぐに感じられた。
休養はとても取らせられる状況ではないにしろ、“一息”ぐらいは入れさせなければそれもまたどこかで致命的な決壊を招くだろう。
「いえ、やはり流石にここの指揮は私の職務ですので、戦況が安定するまでは離れられません。
143: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/01/27(金) 00:50:25.51 ID:sMuggt4e0
2011年8月14日の【ハワイ奇襲】以降、翌年初頭の【艦娘実装】が成るまで人類は世界規模で制海権・制空権を喪失しつつあった。そんな中にあって何故各国が辛うじて致命傷を避け得ていたかと言えば、深海棲艦側の動きがとりわけ最初期は非常に“直情的”だったからに尽きる。
そこに人類がいれば優先順位も何もなくとにかく近場から手当たり次第に殺していき、行軍は前進か後退かのほぼ二択。“ヒト型”が出現してからは戦術規模であれば多少理知的な動きを見せることもあったが、それも広い範囲で見れば基本的に“行き当たりばったり”の域を出ない。
海上ではそれでも圧倒的な力量差ゆえまともに抗うことはできなかったが、特にヨーロッパで【陸上に上げて物量で殴る】という脳筋戦術が多大な戦果を挙げられたのは深海棲艦側に“橋頭堡の構築”の概念がなく孤立させることそれ自体は極めて容易だったからだ。
144: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2023/01/27(金) 01:45:17.90 ID:sMuggt4e0
不幸中の、という注釈は間違いなく必要になるが、それでも“幸い”が一つある。
【海上機動迎撃網】自体は、まだ機能を維持できている点だ。
(我々は、【学園艦棲姫】の存在を起点に最も強く警戒していた筈の“物量”について予想を覆され、主力部隊をフィリピン海に引き摺り出された。
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