2: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:04:43.77 ID:FpkFq5Eu0
――事の発端は30分前。
日差しで暖かくなり始めた午前10時頃に、駅前でフラフラと彼女らしくない様子で歩く先輩を見かけたところから始まった。
心配になって声をかけてみれば――
「これはこれは、恥ずかしいところを見られてしまいました。
3: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:05:28.77 ID:FpkFq5Eu0
「ん? あっちの方を歩いていたら志貴の声が聞こえてきたから」
その黄金に輝く髪で俺の頬をくすぐりながら、アルクェイドが指さしたのは六車線道路の向かい側。
はて?
4: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:06:28.84 ID:FpkFq5Eu0
「人はカレーと聞いて何を想像するか。一般的なところだと玉ねぎと人参にジャガイモ、そして牛肉でしょう。ではナスやオクラを想像するのは間違いでしょうか? いいえ、夏に食べるナスカレーやオクラカレーも暑さに弱った体に活力を与えてくれます。もちろんトマト、キノコ、ズッキーニ。カレーに合う野菜はまだまだあります。
そしてカレーのトッピングで選べるのは野菜だけではありません。エビ、イカ、ホタテ等を加えたシーフードカレー。キウイ、バナナ、パイナップル等によるフルーツカレー。いやそもそも、肉を牛肉にこだわる必要すらありません。鳥でも豚でも、なんなら鹿や猪でも構いません。
トッピング次第でいくらでも必要な栄養素を接種できる。それも、カレー味で!
好き嫌いの多い小さなお子さんでもカレーなら食べられるというケースもあり、全国――いな、全世界のお母さんの味方と言っても過言ではありません!
さらにさらに! ここまで自由自在なカレーですが、彼《カレー》は自らだけでなくその相方も変幻自在。ある時はライス、ある時はナン、ある時はうどん、ある時はラーメン、ある時はパン。人類の主食である穀物との圧倒的、調和力《シンフォニー》!!!
5: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:07:12.54 ID:FpkFq5Eu0
「先輩の言う通りだよアルクェイド。カレーは日本三大国民食の一つにして、インド人十四億による魂の息吹。この世で最も至高の頂《いただ》きに近い完全栄養食なんだ」
「なんとぉ!?」
俺は草食動物。荒れ狂うルーの大波に逆らう事などできない。
6: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:08:05.85 ID:FpkFq5Eu0
※ ※ ※
「へえ〜、ふ〜ん。なんだかシエルっぽい雰囲気のお店ね」
7: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:08:46.19 ID:FpkFq5Eu0
いや、大丈夫なのか!?
先輩ではなく俺たちが大丈夫なのか!?
そういうのを食べ慣れている先輩は大丈夫なんだろうけど、手を伸ばせば届く距離にそんな劇物に鎮座されて、俺たちの目と鼻は大丈夫なのか!?
あ、でもアルクェイドは3000℃の高熱にも耐えられるから辛いのもいけ――いや、あいつニンニク駄目だった!
8: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:09:29.60 ID:FpkFq5Eu0
――待てよ。
アルクェイドはカレーを食べるのは初めてだ。
最初の一口目でスパイス20倍セットに挑むという暴挙を、果たしてあのカレー奉行が許すだろうか?
9: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:10:15.01 ID:FpkFq5Eu0
※ ※ ※
「――――――来たか」
10: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:10:59.98 ID:FpkFq5Eu0
スプーンで掬いあげたカレーをまじまじと観察するアルクェイド。
おい、そんなに眼へ近づけるな。
何の脈絡も無くボコッと湧いた飛沫が眼に飛びかかるかもしれないんだぞ。
クソ、もしかしてお前まだ俺にやられた傷が癒えてないのか。
11: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:11:51.54 ID:FpkFq5Eu0
先輩は本当なら、こんな風に食べる人じゃないんです。
ちょっと健啖《けんたん》なところはあるけれど、それだって普段の運動量を考えれば少ないぐらいだし、そもそも美味しそうに食べる女の子って見ていて癒されるよね?
けど今の先輩は食事休憩無しでの徹夜明け。一周回ってハイな状態ってやつだ。
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