10: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:10:59.98 ID:FpkFq5Eu0
スプーンで掬いあげたカレーをまじまじと観察するアルクェイド。
おい、そんなに眼へ近づけるな。
何の脈絡も無くボコッと湧いた飛沫が眼に飛びかかるかもしれないんだぞ。
クソ、もしかしてお前まだ俺にやられた傷が癒えてないのか。
本来の貴様なら一目で気が付いたはずだ。
その金色の眼を凝らしてよく視るがいい。
視えるであろう。その体内《ルー》に内包された、六百六十六素のスパイス達の混沌が――――――
「味もみておこうっと♪」
「ばっ――――」
ネロ教授の警告も空しく、アルクェイドはそのままスプーンを口に入れてしまった。
ナンにカレーを乗せるわけでもない、カレールーのみの純度100%
くっ。リメイクで出番をごっそりと削られたネロの警告じゃアイツに届かなかったか!
「……ッ!?」
パクッとスプーンを丸ごと口に入れてしまったアルクェイドは、目を白黒させると――
「うっひゃ〜! ア、アハハハハハハハッ! 何これ! 舌がヒリヒリして面白い!」
けらけらと楽しそうに笑い始めた。
「……そうか、良かったな」
最悪の事態――あまりの辛さにスプーンを落とし、それが食器にあたって辺り一面に劇物《カレールー》をばらまくという惨事――が避けられて、安堵の吐息が漏れる。
気が付けば喉がカラカラだった。
知らぬ内に冷や汗が流れていたようで、まだカレーを一口も食べていないのに冷水をあおる。
「こういう味は初めてで楽しいよ。でもちょっと辛すぎるかな? 10倍ぐらいがちょうど良かったかも。
シエルはこれがちょうどいいの?」
「その日の気分によって変わりますね。今日は20倍を食べたい気分でしたが、普通の辛さを食べたい時だってあります。
貴女もカレーが気に入ったのなら色んな種類を味わってみてください。お店によって違う出会いがありますから」
アルクェイドの無邪気な反応をほほ笑ましそうに眺めると、先輩は上機嫌にゆっくりとカレーを食べ始めた。
その光景は減量明けのボクサーが小さくなってしまった胃を労わるように、一口ずつゆっくりと味わい――ん? 先輩?
「ん……ふっ……はふっ」
「……シエル?」
「――――――先輩」
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