3: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:05:28.77 ID:FpkFq5Eu0
「ん? あっちの方を歩いていたら志貴の声が聞こえてきたから」
その黄金に輝く髪で俺の頬をくすぐりながら、アルクェイドが指さしたのは六車線道路の向かい側。
はて?
俺が先輩と話し始めてからまだ一分過ぎたかどうかというところだ。
日中の駅前で車は絶え間なく行きかい、信号機も歩いて一分ほどの所にある。
どうやってコイツは俺に気づかれることなく後ろに回り込めたのだろう。
「アルクェイド。人間社会で生活をするのなら道路交通法ぐらい守りなさい」
「ええ〜? 人間だって歩いて渡っても余裕なら信号無視するじゃない」
「あなたの歩いてはロードバイクみたいなものです」
どうやら先輩にはコイツがどうやってここまで来たか見えていたらしい。
そうか〜、この交通量をスイスイと歩いてすり抜けてきたか〜。
うん、おまえのハチャメチャっぷりには慣れてるから驚かないよ。
……いい加減慣れろ、遠野志貴!
「ところでアルクェイド。今、あなたはカレーを侮辱しましたか?」
「別にカレーをバカになんかしてないけど、カレーばかり食べるあなたを不思議に思うわ。
人間はせっかく色んな料理を生み出したのに同じ物ばかり食べるなんてもったいないでしょ?」
俺が作った中華どんぶりや、学生にとって馴染み深いファミレスやラーメン屋のメニュー。
俺と一緒にそんな物を食べた結果、下々の食事がお気に召したお姫様にとってそれは当然の疑問だったのだろう。
しかし先輩はというと鋭い目つきから一転、今度は憐れむようにアルクェイドを見る。
「そうですか。あなたはカレーをまだ食べたことがないのですね」
「食べたことはないけど、どんな物かは知っているわ。この国ではそれなりに人気がある食事なようだけど、一日三食はあなたぐらいなんじゃない?」
「おや? 食べたこともない料理を知ったように語るとは、三つ子の魂百までとやらですかね」
「む」
「いいですかアルクェイド。
カレーとは――――――――――完全栄養食なのですよ!!」
「か、完全!?」
経験も無しに知識で語ったことを指摘されたアルクェイドは眉をしかめるも、言い返す間もなく自信たっぷりに断言する先輩に度肝を抜かれた。
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