【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:46:40.38 ID:H/R4DuwY0
「ほー、随分と立派な学校じゃねーか。名家のお嬢様は伊達じゃないってわけだな、たれ子」
鞄の中からひょっこり顔を覗かせたネズミは、物珍しそうに辺りをキョロキョロと見渡している。その様子を見て、正確に言えば自分は一人ではないということを思い出した。
「誰かに見つかると厄介ですわ。学園に着いてくるのは構いませんが、せめて大人しく身を隠していてくださいまし。あと、たれ子はやめてくださいます?」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:47:57.25 ID:H/R4DuwY0
久しぶりに登校してきた最強のステイヤーと呼ばれるマックイーンが、校門付近で鞄に向かって声を荒げて話しかけている。何とも奇怪な光景だろうか。そんなマックイーンの背後から二人のウマ娘が嬉々としてやってきた。
「わぁー! おはようございますマックイーンさん!」
「ずっと学校来ねーから心配してたぜー!」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:48:41.15 ID:H/R4DuwY0
放課後、ジャージに着替えたマックイーンは登山用の大きなリュックを背負ってある場所へと向かった。そこは、今は使われていないトレセン学園の旧校舎。外観は廃校のように寂れてはいるが電気や水はまだ使える状態で残されている。それ故に多少古いがシャワー室やトイレなども使用可能。有事の際に緊急避難所として利用出来ると噂されてはいるが、真偽は一般生徒の与り知るところではない。トラックはきちんと整備されており、まだ比較的新しい蹄跡も残っていることからつい最近まで誰かが練習でこの場所を使用していたことが伺えた。
マックイーンはグラウンドの端にテントを設置してトレーニングシューズに履き替えた。しばらくの間ここが一人と一匹の拠点となる。
「さぁ、始めましょう。タイムをお願いしますわ」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:49:59.91 ID:H/R4DuwY0
翌日、普段通り登校し授業に出席したマックイーンは放課後再び旧校舎へと向かった。誰とも接さず、関わらず。チームメンバーやトレーナーにさえもその真意を話してはいない。話せば確実に止められてしまう。最悪の場合、メジロ家に連れ戻され籠の中の鳥のように過ごさなくてはならないかも知れない。あるいは、家督を継ぐ跡取りの為の縁談を持ちかけられるかも知れない。いずれにせよ、今はまだそのどれも望んではいない。あるのはただ、あの日の約束を果たすという使命感。そして、勝ちたいというウマ娘の本能。それに従うべく、マックイーンは今日もジャージに着替えてトレーニングシューズを履く。
「今日は昨日より少しペースを上げていきますわ。ネズミさん、またタイムをお願いします」
「ちょいと待ちな。客が訪ねて来たみたいだぜ」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:51:24.54 ID:H/R4DuwY0
「お前の考えそうなコトは何となく直感的に分かるんだよ。悪いことは言わねぇ。これ以上足に負荷をかけるな。走るどころかマジで歩けなくなるぞ」
「それでも一向に構いませんわ。あなたもウマ娘ならわかるでしょう? 走らずにはいられないという衝動の強さを。テイオーはわたくしに奇跡を見せてくれました。ならば今度はこちらが応えなければならない。わたくしは未来を前借りしてでも、今を駆けたいんです。わかったら邪魔はしないでください」
「……そうかよ。ならこっちにも考えがある」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:52:26.00 ID:H/R4DuwY0
「なにボサッとしてんだよ。走るんだろ? 一緒に走るなら邪魔にはならないよな。ゴルシ様が併せに付き合ってやるんだから感謝しろよ。あと、やべーと判断したらすぐ止めるからな」
「ゴールドシップ……」
「なぁ、お友達も一緒に走るのは構わねーけどよ。もう時計測っちまって良いのか?」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:53:19.11 ID:H/R4DuwY0
昼休みにもなると、トレセン学園内の学食はウマ娘たちで大いに賑わう。自動車並みのスピードで走る彼女たちにとってエネルギーの補給という意味でも食事も立派なトレーニングの一環である。また、年頃の女子ということもあり、大半の生徒たちは学友、ライバルたちと会話に花を咲かせるのだ。
ただし、一部例外もいる。一人黙々と食事に徹したいと思うものもいれば、人付き合いが得意ではなく基本的に一人が好きというものもいる。エベレストのように聳え立つ白米とおかずを瞬く間に食べ終え、おかわりへ向かっているオグリキャップや隅っこで身を竦めるように食事をしているライスシャワー。気恥ずかしそうにウィニングチケットとビワハヤヒデから少しだけ離れた場所に座っているナリタタイシン等がその部類だ。
復学してからはマックイーンも周りを避けるように一人で食事をしていた。最初のうちは多くのウマ娘が心配して話しかけてきていたが、近寄り難い雰囲気を放っているマックイーンに萎縮して今ではその頻度は減っていた。しかし、今日はいつもと違っていた。
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:54:06.18 ID:H/R4DuwY0
「マックイーンさん、これ……食べてください! スピカのみんなはマックイーンさんのこと、いつまでも待っていますから!」
スペシャルウィークはそう言うと、マックイーンのテーブルに大きな段ボールを置いて去って行った。箱の中身は大量のニンジン。次にやって来たのはメジロドーベルとメジロライアン。マックイーンと同様、メジロ家のウマ娘である。
「みんなマックイーンのこと心配してるからさ……辛かったらいつでも戻って来なよ」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:55:04.85 ID:H/R4DuwY0
「よ、よぉ、マックイーン」
「聞いたわよ。精神的なストレスで幻覚が見えているんですって?」
「ちょっ、ちょっとなんなんですの? 一体誰がそんなことを」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:55:45.06 ID:H/R4DuwY0
「それにしても、随分な言いがかりですわ。わたくしが錯乱しているだなんて。ネズミさんを幻覚だなんて……」
「マックイーン!」
返却口で独り言を呟いたマックイーンに対して大声で話しかけきたウマ娘が一人。
以下略
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:58:34.44 ID:H/R4DuwY0
その日の放課後も、マックイーンは旧校舎にてトレーニングを行っていた。未だに足には時折激痛が走り、幾度と無く足を止めてしまう。その度にもう全盛期のようには走れないという現実を直視させられる。その絶望感を振り切るようにマックイーンは再度走り込みを行う。ただがむしゃらにその繰り返し。まるで、出口の見えないトンネルを進んでいるような感覚に陥っていた。
「おーい、たれ子! どうした! もうやめちまうのか!? お前さんの覚悟ってのはそんなもんか!?」
小さい体からは想像もつかないほど大きな檄が飛ぶ。極秘トレーニングの間、ネズミは片時も離れず懸命にマックイーンを支えていた。足の痛みと共に湧き上がる焦りや不安は、その声を聞くと不思議と和らいだ。ネズミの声から伝わってくる自信や安心感はまるで熟練のトレーナーそのもの。その声援に背中を押される度に幾度と無く救われてきた。自分は決して一人ではないと奮い立つことが出来た。
以下略
AAS
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