【ウマ娘】タキオンのトレーナー、死す
1- 20
31:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:43:46.13 ID:emsexCaj0
彼女は私が走る姿を、いつもキラキラとした目で見つめた。
走り終える私に駆け寄って、お疲れ様、と笑顔で迎えてくれた。
いつも熱を込めて私に語る。

私も、あなたと一緒に果てが見たい。
以下略 AAS



32:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:45:14.22 ID:emsexCaj0
レース当日。
タキオンのコンディションは最悪だった。
頭が痛くて、身体が重くて、脚が痛くて、
まともに走れるとは思えない状態だった。

以下略 AAS



33:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:46:35.35 ID:emsexCaj0
どうして私は走るんだったっけ?

思い出せない。もう忘れてしまった。大事な事だったのに。
どうして大事だったのだろう?

以下略 AAS



34:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:48:11.23 ID:emsexCaj0
…真っ白な世界から引き戻される。

前には、誰も存在しなかった。

会場の異様などよめきと歓声が、耳に入ってきた。
以下略 AAS



35:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:49:26.64 ID:emsexCaj0
病院に辿り着いたタキオンは、病室の前で、少し立ち止まった。
いつものように、いつもの自分を思い出してから、無造作に扉を開ける。

「やあ、トレーナー君。見てくれていたかな?」

以下略 AAS



36:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:50:42.10 ID:emsexCaj0
備え付けのテレビに、今日のレースの様子が映っていた。

「録画してたの。それで、何回か見直してた」

「…ふぅン?何か気になる点でも?」
以下略 AAS



37:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:52:14.33 ID:emsexCaj0
「どうしたんだい。ちゃんと約束を果たしてきたんだよ?君のことだから、もっと興奮してくれると思ったのに。ああ、病人が興奮したらまずいか。なあ?」

「…」

トレーナーは画面上のタキオンを眩しそうに見つめながら、ぽつりと、
以下略 AAS



38:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:53:24.34 ID:emsexCaj0
かすれて、絞り出すような声だった。

トレーナーの眼から、涙がボロボロ零れた。
それを拭って、悔しそうに、唇を噛みしめて、俯いた。
それからトレーナーは、しゃっくり混じりに、恥じ入るように呟いた。
以下略 AAS



39:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:54:29.45 ID:emsexCaj0
どうして泣くんだ?

どうして笑わないんだ?

どうして褒めてくれないんだ?
以下略 AAS



40:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:56:26.73 ID:emsexCaj0
気がついたら、力づくで、トレーナーをベッドに押し倒していた。
両手を抑えられて、驚いた表情をしているトレーナーの、
涙で濡れて、見開いた目が、間近にあった。

タキオンは、何かを言おうとして、少し、喉でつっかえた。
以下略 AAS



41:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:57:42.70 ID:emsexCaj0
タキオンは、研究も、走ることも、やめた。
最後まで、トレーナーの側にずっといることを選んだ。

ある日、トレーナーの容態が急変して、治療の甲斐なく、そのまま亡くなった。

以下略 AAS



63Res/52.34 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice