40:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:56:26.73 ID:emsexCaj0
気がついたら、力づくで、トレーナーをベッドに押し倒していた。
両手を抑えられて、驚いた表情をしているトレーナーの、
涙で濡れて、見開いた目が、間近にあった。
タキオンは、何かを言おうとして、少し、喉でつっかえた。
「どうして、泣くんだ」
私が、言いたいこと。
「そんなことのために、頑張ったんじゃない」
たくさん、あった。
「わ、私は、ただ」
たくさん迷惑をかけた。たくさん振り回した。たくさん世話になった。
「君と、いられ、て」
本当は甘えていたかった。頼られたかった。自慢に思われたかった。
「夢を、一緒に、見ら、れて」
一緒に夢を叶えたいと思えた。この人と一緒に喜びたいと思った。分かち合いたいと思った。
「嬉しかっ、た」
離れたくなかった。
ずっと、一緒に、いたかった。
ずっとこらえていた涙が、こぼれて、トレーナーの頬にぽたぽたと落ちた。
トレーナーの涙と混じって、流れていく。
涙が、止まらなくなった。
タキオンが抑えていた手を放すと、トレーナーが、手を伸ばして、タキオンを抱きしめた。
トレーナーは震える声で、ごめんねと、耳元で囁く。
そして、タキオンの頭を優しく撫でた。
愛おしそうに、何度も何度も、ゆっくりと撫でつけた。
タキオンは、嗚咽を漏らして、
しがみつくようにトレーナーを抱きしめて、泣きじゃくった。
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