38:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:53:24.34 ID:emsexCaj0
かすれて、絞り出すような声だった。
トレーナーの眼から、涙がボロボロ零れた。
それを拭って、悔しそうに、唇を噛みしめて、俯いた。
それからトレーナーは、しゃっくり混じりに、恥じ入るように呟いた。
「…本当は、一着を取って欲しく、なかった。私以外の手で、一着をとるタキオンなんて、見たくなかった」
「…」
「あの人が、タキオンのことを、話すたびに、胸が痛くて、大丈夫だって言うタキオンを、見るたびに、辛くなって、
あの人とタキオンが、今、一緒にいるんだって思うと、それで、自分だけ、ここにいると、寂しくて、グチャグチャな気持ちになって、タキオンが、負けてしまえばって」
トレーナーは、消え入るような声で呟いた。
「…タキオンには、私がいないと、駄目だったんだって、最後くらい、そう、自惚れたかった」
トレーナーは、叱られている子供のように頭を抱えて、小さくなってうずくまった。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい」
肩を震わせて謝り、泣き続けた。
酷い裏切りをしてしまったかのように。
「…」
どうして?
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