26:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:37:11.54 ID:emsexCaj0
新しいトレーナーは、病室をたまに訪ねているらしい。
不愉快に感じながら何をしに行っているのかときくと、トレーニングの進捗具合の報告をして、
タキオンのことを褒めちぎって、次のレースは一着間違いないですよとのたまっているらしい。
相性バッチリだもんなと笑うこいつの姿はこの上なく不愉快だったが、
27:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:38:32.28 ID:emsexCaj0
今日、トレーニングの前に、胃の内容物を吐き出した。
よく分からない色の液体がトイレの中に落ちた。
どうやら身体の不調は深刻らしい。
薬の量を増やすことにした。
28:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:40:07.18 ID:emsexCaj0
追加の自主トレーニングの途中、脚が妙にむずがゆかった。
タキオンは苛立たし気に、脚を叩きつけるように、何度も、地面を勢いよく踏みつけた。
「タキオン」
29:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:41:16.43 ID:emsexCaj0
ルドルフは、少し逡巡したが、タキオンに向かって言った。
「…ハードワークは、非効率的だと思わないか?」
「…場合による」
30:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:42:31.25 ID:emsexCaj0
苛々とする。
どうしてしつこく話しかけてくるんだろう。
どうして真っ直ぐにこちらを見て、何かを伝えようとしてくるのだろう。
いらない。何もいらない。
31:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:43:46.13 ID:emsexCaj0
彼女は私が走る姿を、いつもキラキラとした目で見つめた。
走り終える私に駆け寄って、お疲れ様、と笑顔で迎えてくれた。
いつも熱を込めて私に語る。
私も、あなたと一緒に果てが見たい。
32:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:45:14.22 ID:emsexCaj0
レース当日。
タキオンのコンディションは最悪だった。
頭が痛くて、身体が重くて、脚が痛くて、
まともに走れるとは思えない状態だった。
33:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:46:35.35 ID:emsexCaj0
どうして私は走るんだったっけ?
思い出せない。もう忘れてしまった。大事な事だったのに。
どうして大事だったのだろう?
34:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:48:11.23 ID:emsexCaj0
…真っ白な世界から引き戻される。
前には、誰も存在しなかった。
会場の異様などよめきと歓声が、耳に入ってきた。
35:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:49:26.64 ID:emsexCaj0
病院に辿り着いたタキオンは、病室の前で、少し立ち止まった。
いつものように、いつもの自分を思い出してから、無造作に扉を開ける。
「やあ、トレーナー君。見てくれていたかな?」
36:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:50:42.10 ID:emsexCaj0
備え付けのテレビに、今日のレースの様子が映っていた。
「録画してたの。それで、何回か見直してた」
「…ふぅン?何か気になる点でも?」
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