152:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:54:19.42 ID:tRJaplXx0
「worker!
ええと、WをLに、RをCに。《一回ずつ》……
locker=I
ろ、……」
「ロッカー」
153:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:55:12.22 ID:tRJaplXx0
「千夜さん、流石です!」
「いいえ」
「これで真実は、都と千夜さんのものだっ!」
都は言い放ち、聴衆の喝采に応えるかのように、気取って一礼して見せた。
154:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:56:17.64 ID:tRJaplXx0
このまま突っ立っていては、すごいすごい″U撃を延々と捌き続ける羽目になるようだ。
「何かがロッカーに隠されているのかもしれませんし、行ってみましょう」
「おおっ、私も今言おうと思っていました! 気が合いますね! 行ってみましょう!」
ぐいっと、手を引かれ――
155:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:56:46.11 ID:tRJaplXx0
しかし、
「そうだ」
「ん」
「もう一つ、解けてない謎があるんです」
156:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:57:35.64 ID:tRJaplXx0
「私も絵画を見て推理するのが好きなんですよ」――推理? 美術の話だったのでは?「ところでプロフィールを見てみたら、千夜さんの趣味は料理≠ニ睡眠≠ノなってました。これは妙ですよ」
「変ですか。プロフィールなど、普通の書き方を知らないものですから」
「いえいえ、普通に書けてましたよ! ただ料理はともかく、睡眠は趣味って感じがしませんから。どうしても何か書かないといけなかったなら、美術鑑賞≠ノすればいい。そうしなかったのは、趣味というほど美術が好きではなかったからでしょうか? ……そこで、私の頭脳は最大の疑問を探り当ててしまったのですよ」
157:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:59:02.78 ID:tRJaplXx0
「千夜さんがお好きだとウワサになっているのは美術館≠ネのです。美術≠ナはなく! これは一体何を意味するのか? この些細な違いに事件を見出すのが探偵というものです! そう、パセリの沈んだバターを舐めるようにね!」
都は得意げに言うーー成る程、探偵なのかもしれないな。
彼女にかかれば、まったく、問題ばかりが山積みらしい。
158:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:59:47.95 ID:tRJaplXx0
「それで? 貴女は何を見出したのです」
「分かりませんッ!」
これも得意げだ。何も分からない事を明かして気勢を削がれない事こそ、千夜には分からない。
「分かりませんか」
「分かりませんでした! どうしてなんですか? 気になります!」
159:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:00:29.65 ID:tRJaplXx0
「謎ですか」
「大きな謎です! 面白いです! 白雪千夜には、謎がある」
不躾なものだ。他人の内面にずけずけ踏み込み、暴いてやろうという試みだ。だが、と思う。彼女の瞳が求めているのは、ただ興味本位の知識欲を満足させる答えではないのだろう。仲良くなりたい、子供のような心でそう願い、相手を知りたいと望んでいる。都は仲良くない≠ウえ楽しい≠ヨの入り口にしてしまったのだ。そう思う。只今の問答に悪い気がしなかった事へ、理由を付けたかったのかもしれない。
160:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:01:05.60 ID:tRJaplXx0
目を切ると、都は笑顔で千夜を覗き込んだ。やっぱり、やりづらい。そんな風に見ても何も出ないのに。ため息の牽制も、効果はなかった。
「私が美術ではなく、美術館を好きだといった理由を問いましたね」
「はい!」
「リトルなリドルですよ、そんなのは。別に教えてもいいのですが、またにしておきましょう。今は私にだって、解決すべき問題がありますから。それまではその謎を挑戦状にしておきます。自力で答えを見つけてみるのですね、探偵さん」
161:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:01:50.70 ID:tRJaplXx0
寒くて眠れそうにないと言い、
「ココア淹れてよ」
「実際には」千夜はちとせに答える。「寝る際に暖めるべきは体の外側で、内側の体温を逃さなくてはいけないのですよ」
「へえ、流石千夜ちゃん」
162:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:02:28.99 ID:tRJaplXx0
「え、こないだのお礼? なんだー、気にしなくてよかったのに。ううん、ちょーだい。あ、これかー。杏、飴は手使わないで舐めたいのに、これったら棒が危なっかしいじゃない。ううん、ちょーだい。ありがと。杏さ、こないだこれ買ったの。ゲーセンのね、二百円入れたら四本出るやつ。いやルーレットで四本から七本出るって書いてはあるけど、結果出るのは四本なやつね。あれさ、筺にお金入れたら、一本ずつ取り出し口に落ちてくるのね。コトンって。一本目ね、バナナシェイク味。まー好きじゃないけど、あえて選べないやつで買ってるから。これも縁じゃない、バナナいいじゃない、って思って。で、次何出るかな、って。わくわくするよね。したっけ、コトンつって。バナナシェイク。ま、ま、ま、って感じ。こういう場合もあるよねって。いいじゃん食べよーよって。で、その次何出たと思う? 三本目。コーラとかあるじゃん。イチゴとか、いっぱい種類さ。コトン! バナナシェイク! 筺見るじゃん。これバナナシェイクの筺? 違うじゃん。《バナナシェイクしか出ません》って書いてある? いやない。ガラス越しに色んな味見えるじゃん。もう嫌じゃん。四本目に望みかけるじゃん。望みっていうか、もう王子様だよね。バナナに囲まれた杏を救ってくれーって。うん。コトンって出るじゃん、王子様。何だろ? バナナシェイク! わーお! バナナ王子バニラアイスまみれ! もうさ、せめて一本違うの出てくれたら、杏それが腐った卵味でもバンザイしたよー。…… いや、せん‼︎
……なので、イチゴくれて、ありがと。うまー」
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