150:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:53:13.22 ID:tRJaplXx0
それから、口を開いた。
「文字列が循環して前後を特定する手段がないなら、これは順序を必要としない情報なのかも。《一回ずつでいい》というのもヒントになるでしょう。つまりこの二つは並列して処理すべき、アルゴリズムそのもの…… そう考えれば、2は換字を指示するtoとも解釈出来る。toでは一筆書き出来ないのを嫌ったのでしょう。
WtoL、RtoC。WをLに、RをCに…… ふむ」
思い当たって、スマートフォンで検索を始める。
151:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:53:51.61 ID:tRJaplXx0
首を傾げ、
「ああ、蟻ですね!」
「関係する語から、分けて、要素にWとRを、そして少なくとも一方を二つ以上持つものを試してみればいい。
蟻にまつわる英単語は幾つかあります。ant(蟻)、queen(女王)、soldier(兵隊)……
152:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:54:19.42 ID:tRJaplXx0
「worker!
ええと、WをLに、RをCに。《一回ずつ》……
locker=I
ろ、……」
「ロッカー」
153:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:55:12.22 ID:tRJaplXx0
「千夜さん、流石です!」
「いいえ」
「これで真実は、都と千夜さんのものだっ!」
都は言い放ち、聴衆の喝采に応えるかのように、気取って一礼して見せた。
154:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:56:17.64 ID:tRJaplXx0
このまま突っ立っていては、すごいすごい″U撃を延々と捌き続ける羽目になるようだ。
「何かがロッカーに隠されているのかもしれませんし、行ってみましょう」
「おおっ、私も今言おうと思っていました! 気が合いますね! 行ってみましょう!」
ぐいっと、手を引かれ――
155:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:56:46.11 ID:tRJaplXx0
しかし、
「そうだ」
「ん」
「もう一つ、解けてない謎があるんです」
156:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:57:35.64 ID:tRJaplXx0
「私も絵画を見て推理するのが好きなんですよ」――推理? 美術の話だったのでは?「ところでプロフィールを見てみたら、千夜さんの趣味は料理≠ニ睡眠≠ノなってました。これは妙ですよ」
「変ですか。プロフィールなど、普通の書き方を知らないものですから」
「いえいえ、普通に書けてましたよ! ただ料理はともかく、睡眠は趣味って感じがしませんから。どうしても何か書かないといけなかったなら、美術鑑賞≠ノすればいい。そうしなかったのは、趣味というほど美術が好きではなかったからでしょうか? ……そこで、私の頭脳は最大の疑問を探り当ててしまったのですよ」
157:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:59:02.78 ID:tRJaplXx0
「千夜さんがお好きだとウワサになっているのは美術館≠ネのです。美術≠ナはなく! これは一体何を意味するのか? この些細な違いに事件を見出すのが探偵というものです! そう、パセリの沈んだバターを舐めるようにね!」
都は得意げに言うーー成る程、探偵なのかもしれないな。
彼女にかかれば、まったく、問題ばかりが山積みらしい。
158:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:59:47.95 ID:tRJaplXx0
「それで? 貴女は何を見出したのです」
「分かりませんッ!」
これも得意げだ。何も分からない事を明かして気勢を削がれない事こそ、千夜には分からない。
「分かりませんか」
「分かりませんでした! どうしてなんですか? 気になります!」
159:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:00:29.65 ID:tRJaplXx0
「謎ですか」
「大きな謎です! 面白いです! 白雪千夜には、謎がある」
不躾なものだ。他人の内面にずけずけ踏み込み、暴いてやろうという試みだ。だが、と思う。彼女の瞳が求めているのは、ただ興味本位の知識欲を満足させる答えではないのだろう。仲良くなりたい、子供のような心でそう願い、相手を知りたいと望んでいる。都は仲良くない≠ウえ楽しい≠ヨの入り口にしてしまったのだ。そう思う。只今の問答に悪い気がしなかった事へ、理由を付けたかったのかもしれない。
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