192: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:33:52.07 ID:17bnaLyc0
お姉さんが一息ついて、お茶を飲む。男の子は彼女の膝の上で、アップルジュースを飲んでいる。
お姉さんの境遇を思い、私の心は締め付けられる。
「弟の消息を知ったのは……」
193: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:34:21.47 ID:17bnaLyc0
弟の消息を知ったのは、弟が楓さんの事務所に就職して、だいぶ経ってからのことでした。彼から私に、連絡があったんです。
どういういきさつで私の消息を知ったのか、弟は話してくれませんでした。
でも、彼が無事でいてくれて嬉しかった。そう思っていました。
せっかくだからと、弟がここに遊びに来てくれて、その時弟の境遇を聞きました。
194: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:34:49.28 ID:17bnaLyc0
お姉さんは言葉を失い、泣くばかり。男の子はそんな母親を心配して「げんきだして。だして」と、お姉さんに声をかける。
……なんと言えばいいのか、いや、なにも、言うことはできない。
フィクションのような、テレビのような、そんな虚構と思いたくなる話。でも、現実の話。
私は言葉を失った。
195: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:35:30.44 ID:17bnaLyc0
「ところで」
私はお姉さんに尋ねる。
196: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:35:57.77 ID:17bnaLyc0
楓さんへ
これを楓さんが読まれるとき、僕はこの世にいないでしょう。
ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
197: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:36:45.05 ID:17bnaLyc0
便せん一枚に、短い言葉。
彼はなにを思って、これを書いたのだろう。私は。
私は。
198: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:37:23.52 ID:17bnaLyc0
翌日。私は社長室へ向かう。
「社長さん」
199: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:37:50.09 ID:17bnaLyc0
「P君が亡くなったのは、その翌日だったのです……彼はその自称父親に、追い詰められていたのだろうと、思います」
どれほどのプレッシャーを、Pさんは感じていたのだろう。
それをおくびにも出さず、彼は私のプロデュースを続けていた。
200: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:38:30.31 ID:17bnaLyc0
季節は、移ろいゆく。
Pさんがいなくなって、二年と半年。私はテレビの中で、歌っている。
「ありがとうございました」
201: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/25(金) 23:38:59.90 ID:17bnaLyc0
いつもの挨拶。でも今は、少しだけ違っている。
「ところで楓さん」
「はい?」
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