高垣楓「あなたがいない」
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195: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:35:30.44 ID:17bnaLyc0

「ところで」

 私はお姉さんに尋ねる。

「納骨は、されないんですか?」

 お姉さんは彼の遺影を眺めたまま、呟く。

「弟のお墓を作って納骨してしまったらもう、会えなくなる気がして……」

 私と、同じだ。そう思った。

 Pさんはもういない。それは紛れもない事実。
 しかし私は、事実を認めたくない。認めてしまったら、私の中のPさんがいなくなってしまう。そんな気がしたのだ。
 それが私の呪縛であることも、知っている。
 そうして心壊れても私は、Pさんを想い続けている。

「お姉さん」

 私も、彼の遺影を見ながら、呟いた。

「時々、Pさんに会いに来て、いいですか」

 お姉さんは、私の問いかけに答える。

「いつでも……会ってあげてください」

 お姉さんのお宅から辞去する時、手紙を渡される。

「これ、受け取ってください」
「これ、は?」
「弟が楓さんに宛てた、手紙です」

 本当ならすぐに渡せばよかったけれど、心の踏ん切りがつかなくて、と、お姉さんから謝罪を受ける。
 それは些細なことで、こうしてPさんの手紙が私の手元へ来たことが、とてもありがたかった。
 彼女にお礼を言い、男の子に「また来ても、いい?」と言葉をかける。彼はこくり、と頷いた。
 それだけで不思議と、ほっとする。私は「また伺います」と言い残し、東京へ帰る。

 帰りの新幹線。Pさんからの手紙を、開けた。




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