十時愛梨「それが、愛でしょう」
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51:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:28:37.72 ID:n4MKx+790
 今アイドルになりたくて、そしてトップを目指す気概があるならシンデレラ城の門を叩け。
 オーディションで出番が回ってくる前に、私と同じ候補生だった子たちの誰かが、誰の受け売りなのかは知らないけれど、どうにも有名になっているらしいそんな、格言めいたことを呟いて、闘志を燃やしていたことを思い出す。
 初めに言い出したその子もどうやら合格したみたいで、今は結構やり手のプロデューサーがついたりして、期待されているとは聞いたのだけれど――まあ、私にはあまり関係のない話だ。

 とはいえ、いつだって華やかなのはカメラが映し出すピラミッドの天辺だけだ。
以下略 AAS



52:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:29:36.97 ID:n4MKx+790
 好き嫌いで語るなら、私はプロデューサーのそういう無遠慮なところがあんまり好きじゃないけれど、多分悪い人じゃないんだというのは、私の無茶なお願いを聞いてくれて、それを形にしてくれたことからもわかる。
 歌いたい曲がある。
 新人がそれをリクエストするのは、分不相応なことだというのはわかっていた。
 それでも私に担当のプロデューサーがついたあの日、開口一番に言ったのは挨拶とか自己紹介じゃなくて、そんな無謀な、戯れ言だと一蹴されるようなお願いだったのは今でもはっきりと覚えている。
 それを聞いたプロデューサーは、当然だけど笑っていた。さっきみたいに豪快にがはは、と大口を開けて。呵々大笑、なんて言葉を実践するならきっとこんな感じだとばかりに笑っていたのだ。
以下略 AAS



53:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:30:32.49 ID:n4MKx+790
 それが、愛でしょう。二人の歌姫に歌い継がれたナンバーの名前。
 デビューしたての新人にはあまりにも荷が重いと、それどころか不遜でさえあると言われたって、何の文句も返せない。
 だけど、歌いたかった。例え目の前にどれだけの大金を積まれた上で別な曲を歌ってくれと言われても、首を横に振るぐらいに、私の心はそれを求めていた。
 正直なところ、デビューしたばかりのアイドルが何の歌を歌えるのかなんて訊かれたら、多分その答えは何も歌えないというのが正しいのだろう。

以下略 AAS



54:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:31:39.83 ID:n4MKx+790
 薄く目を見開いて、カーテンの隙間から見える舞台はきっときらめく場所からは遠いのだろう。喝采は湧き起こらない。ペンライトが描く虹は浮かばない。
 ――それでも。
 自分に言い聞かせるように、繰り返す。
 それでも、今日ここから、私の旅は始まるのだ。

以下略 AAS



55:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:32:47.49 ID:n4MKx+790
「未熟者かもしれません、だけど、小さい頃に歌が嫌いになりそうだった私を助けてくれた人に感謝を込めて、全力で歌います!」

 恋は一種類だけだけど、愛にはいくつもの種類があるんだぜ、なんて歌っていたのはどこの誰だろう。緊張している今じゃなくたって、思い出せないけれど。
 今この瞬間、私にしかないものを歌いたい。だけど、ふとしたときに湧き起こってくるものじゃなくて、ずっとずっと、抱え続けて生きてきたもののことを。

以下略 AAS



56:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:33:33.84 ID:n4MKx+790
終わりです、長々と失礼しました。HTML化依頼出してきます


57:名無しNIPPER[sage]
2020/06/19(金) 14:11:07.43 ID:FO1+L8RGo
良作の予感
後でゆっくり読むわ


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